福井:行政法E(19.4.26)
行政組織法B
U 国
⑴ 内閣法
⑵ 国家行政組織法
⑶ 内閣府設置法・各省設置法
内閣府の主任の大臣は内閣総理大臣です。
内閣府には、ほかの省に無い存在として、内閣官房長官・副長官、特命担当大臣、四つの重要政策会議が置かれ、また、「特別な機関」として宮内庁、外局として国家公安委員会、公正取引委員会、金融庁が置かれています。なお、国務大臣を以てその長に充てる委員会及び庁は、現在では国家公安委員会のみとなっています。
⑷ 府省の変遷について
行政組織の基本単位となる「省」について、その変遷を見ておきましょう。もともと国家の原型は「五省」から始まるといわれます。国の防衛を所管する外務・軍部、そのための資源を調達する財務、国内の治安・振興を担当する司法・内務の五つです。
我が国の場合、明治初年から試行錯誤の後、明治18年に内閣制度が確立しますが、この時点で9省です。大きな変化は戦後〜昭和23年と平成13年にありました。省の変化を知っているからといってほとんど何の役にも立ちませんが、「府省は社会経済の変化に応じて再編されるべきもの」という認識を持ってもらえるといいと思います。
⑸ 各省について
現在、内閣府のほか、11省が置かれています。(本年1月にできた防衛省が最新です)
⑹ 各府省の定員について
行政機関の職員の定員については、総定員法その他の法令で決まっています。
(ここから次回)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
V 地方公共団体
1 地方公共団体に関する基本的な定め
地方自治の保障(憲法92条)の内容として、団体自治と住民自治が定まっていると解されています。すなわち、「国から独立した地方公共団体を設置し、住民の意思に即して事務を実施する。」ということです。
この規定を受けて、昭和22年に地方自治法(昭和22年法律67号)が制定されました。
地方自治法はその後何度も改正を経ていますが、現在まで地方自治に関連する基本法となっています。
(関連)地方財政法、地方税法、地方公務員法、地方公営企業法・・・
2 地方公共団体制度の沿革
地方公共団体制度の変遷について触れておきます。ポイントはいくつかありますが、
@ 我が国の地方公共団体は明治以来、府県・市町村という二重性を持っている
A 明治憲法下でも制度にはいろんな変更があった
B 日本国憲法・地方自治法の制定により大きく性格が変わった
C 近年大きな改革がいくつかありましたが、それでもなお未解決の課題を多く抱えている
D 府県・市町村の間の格差は大きく、またその地域範囲は決して永続的ではない、
ことについて認識しておいて下さい。
⑴ 明治憲法制定以前の地方制度
府県・(郡)区・町村
⑵ 明治憲法下の地方制度
府県・(郡)・市町村(大都市特例)
・憲法上の保障がない。(立法政策による)→府県制・市制・町村制
・都道府県は不完全自治体(官選知事)
・地方団体は国の行政組織としての性格もあわせもつ
⑶ 日本国憲法・・・地方自治の保障
・都道府県・市(区)町村(政令指定都市制度)
・憲法上の制度的保障→憲法92条+地方自治法等
・知事・市町村長公選
・機関委任事務制度
・ 地方交付税制度
・(地方支分部局)
このほかにも、戦後改革においては、執行機関の多元制が導入され、教育委員会(当初公選制)、公安委員会などが創設された。また、警察についても、戦後初期には市町村警察制度が試みられた。
⑷ 地方分権改革
平成11年地方分権一括法(地方自治法等改正)による機関委任事務の廃止→法定受託事務の創設
⑸ 市町村合併により市町村が広域化(平成10年度末約3200→平成18年度末約1800)
⑹ 三位一体改革
税源の見直し(国▽・地方△)、補助金・交付金の見直し(国△・地方▽)、事務事業の移転(国▽・地方△)
3 地方公共団体の種類
地方公共団体は普通地方公共団体と特別地方公共団体に分けられます。
⑴ 普通地方公共団体
都道府県・市町村・・・自治事務、法定受託事務
・ 憲法上自治権を保障された存在である。
・ 二重性が認められており、東京都の特別区の区長が公選となっている。
・市町村合併
(参考:特例のある市)
○ 政令指定都市・・・人口50万人以上(15→17)
○ 中核市・・・人口30万人以上(37→35)
○ 特例市・・・人口20万人以上(39→44)
○ 国の地方への関与方法(地方自治法245条〜)
自治事務への関与・・・是正要求
法定受託事務への関与
@ 所管大臣の事務処理基準の策定
A 違法・著しく不当な場合の是正改善措置の指示
B 法令に定められた許認可行為
C 職務執行命令訴訟→代執行
D 関与の文書主義(行政手続法と同様)
E 地方公共団体側の不服→国地方係争処理委員会に審査請求→高等裁判所への取消等請求訴訟の提起
○ 都道府県と市町村の間の紛争→自治紛争処理委員
(参考)機関委任事務・・・法令に基づき、国の事務を地方公共団体の機関に委託して行わせるものであった。地方公共団体側は国の下部機関として指揮を受ける。
・地方議会側にこれに関する条例の制定権はなかった。
・知事は主務大臣、市町村長は知事の指揮・監督下に置かれた。
・知事、市町村長が指揮に従わない場合、職務執行命令訴訟→代執行の道があった。
⑵ 特別地方公共団体
・ 一般的・普遍的に存在するものではなく、それぞれの存立目的をもって存在するもの。内部組織・権能もそれぞれに決まる。
@特別区(区長は区議会選任・知事同意→49年改正により区長選挙制)
A複合的地方公共団体
地方公共団体の組合(一部事務組合・全部事務組合等)
広域連合(市町村・都道府県の事務組合)
地方開発事業団(住宅・工業用水・水道・下水道などについて総合的開発計画に基づく事業などを行う)
B市町村の内部団体的組織
財産区(市町村の一部に存在する財産・公の施設を管理)
合併特例区(市町村合併特例法に基づく)
4 普通地方公共団体の制度的特徴
普通地方公共団体の行政機関に関する特徴的な制度には次のようなものがあります。これらの制度は、団体自治よりも住民自治の観点から見ると理解しやすいと思います。
⑴ 首長制(ただし長の不信任決議と長の解散権の規定あり)
首長のイニシアチブによる総合性確保、独断・権限の集中
⑵ 牽制方式と執行機関の多元主義
○ 執行機関: 長 (知事、長)・・・規則の制定、事務の統轄
◎ 議事機関 議会・・・議決権:条例の制定、予算議決、重要な契約締結・財産取得等の決定、
監視権、調査権
条例・規則 条例:団体が制定 刑罰が可能(2年以下の懲役など) (科罰)刑事訴訟法に基づき国が管轄 ※条例制定権の限界
規則:団体の長が制定 刑罰不可(5万円以下の過料のみ) 長が規則に基づき過料を徴収
○ 長の権限を分掌・・・事務局部、出先機関
○ 長の補助機関・・・副知事・出納長、助役・収入役
● 独立の執行機関・・・教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会・公平委員会、監査委員、公安委員会・・・。
⑶ 住民の地位
・長・議員の選挙
・条例の改廃請求(イニシアチブ)
・監査請求
・議会解散請求(リコール)
・長等の解職請求
・住民監査制度
・住民訴訟
・法定外参加システム・・住民投票、アンケート、公聴会など
W その他公共団体