(まとめ)

T 行政法総論

 1 大陸法系と英米法系

@         大陸法系・・・ドイツ、フランス(行政裁判所、公法と私法の区別、法律による行政)

A         英米法系・・・イギリス、アメリカ(通常裁判所、コモン=ロー(行政も私人も同じ法律体系))

2 法律による行政の原理(オットー=マイヤー、美濃部達吉)

  @ 法律による法規創造力の原則・・・法規(国民の権利義務に変動を及ぼす一般的抽象的規律)の創造は、立法権の専権に属し、行政権は、法律による授権が無い限り、法規を創造することはできない。(憲法41条に対応)

A     法律の優位の原則・・・行政活動は、存在している法律の定めに違反して行われてはならない。

B     法律の留保の原則・・・行政活動は、Aに加えて、(一定の分野では)それを行うことを認める法律上の根拠がなければ、行うことができない。

 3 法律の留保原則の適用範囲について

  ア 侵害留保説  国民の権利自由を権力的に侵害する場合には法律の留保の対象となる。

  イ 全部留保説  国民の権利自由を制限するもの、国民に権利を与え義務を免じるものであるとを問わず、国民の権利義務にかかわる場合には法律の留保の対象となる。

  ウ 権力留保説  権力的作用(行政側が一方的に法律関係を決めたり強制を加える活動)については法律の留保の対象となる。

  エ 社会留保説  アの侵害行政に加え、社会権の確保を目的として行われる生活配慮行政も法律の留保の対象となる。

オ 本質留保説  国民の基本的人権にかかわりのある重要な行政作用の基本的な内容については、法律の留保の対象となる。

4 行政の発展

@秩序行政・・・国または地方公共団体の存立の維持を目的とする作用

A整序行政・・・秩序を整備、形成することを目的とする作用

B給付行政・・・生活配慮のための給付を目的とする作用

U 行政組織法

 1 行政主体  行政上の権利・義務の主体となる法主体(法人)。国、地方公共団体、独立行政法人、公共組合など

 2 行政機関  法人である行政主体に代わって、行政活動を行う内部機関。自然人がその職にあたる。行政機関は権利義務の主体とはならない。

  ⑴ 行政庁・・・行政主体の意思を決定し外部に表示する権限を持つ機関。内閣、○○大臣、公正取引委員会、○○県知事、××市長など。法令の規定により、財務大臣の下部機関である税務署長などが行政庁になる場合もある。

  ⑵ 諮問機関・・・上級機関の判断の形成のために情報を与えたり提言を行う権限・責務を有する機関。審議会、顧問など。

  ⑶ 参与機関・・・諮問機関の一種で、その意見・提言が行政機関を法的に拘束する権限を与えられたもの。総務省に置かれる電波監理審議会など。

  ⑷ 監査機関・・・行政機関の事務や会計の処理を検査し、その適否を監査する機関。総務省行政評価事務所や会計検査院など。

  ⑸ 執行機関・・・行政目的を実現するために必要とされる実力行使を行う機関。警察官、消防職員、徴税職員など。

  ⑹ 補助機関・・・行政庁の職務を補助するために置かれる機関(普通の公務員)。⑵〜⑸の機関も補助機関とひとくくりにされることもある。

 3 独任制と合議制

  行政機関がひとりの自然人で占められるか、複数人の合議制となっているか、による分類。特に行政庁について言う。行政庁は意思決定を迅速に行い、責任を明確にするため単独の自然人に当たる独任制をとるのが普通とされるが、特に政治的に中立公正な行政を営む必要のある領域や専門技術的な知見に基づく判断を必要とする分野においては、複数の自然人による合議制の行政庁が設けられている。公正取引委員会・国家公安委員会や地方公共団体の教育委員会などがその例である。

 4 行政機関の一体性の保持

行政機関は次のような原理に基づいて構成・運営されている。

@ 階層性、権限の分配、相互調整    A 指揮監督・・・監視、訓令権、取消権・停止権など

5 権限の委任・代理

・委任・・・行政機関が自己に与えられた権限の一部を他の行政機関に委任して行わせること。法律効果は受任者に帰属する。法律の根拠が必要。

・代理・・・権限そのものはもとの行政機関に残したまま、現実の行使を他の機関に代行させること。権限者が授権するものを授権代理といい、権限者に事故等があった場合に法律の定めるところに従い他の行政機関が本来の行政庁の権限すべてを代行するものを法定代理という。

・専決・・・権限の行使について、行政庁が専決規定などの定めに基づいて、その補助機関に事務処理の決定を委ねるもの。

 6 国の行政組織(※「行政機関」の語は、国家行政組織法では一定の所掌事務を分担する自然人の集合体をいう)

  主要な国の行政組織   ・内閣(内閣総理大臣+14人以内の国務大臣(必要な場合にはさらに+3人))

   ・内閣府 各省 (府は1、省は11(平成19年に防衛庁→防衛省で11)。国家公安委員会(委員長は国務大臣)を加えて1府12省庁という)

   ・外局(庁・委員会)、内部部局(局・官房・課など)、地方支分部局、特別の機関、審議会等など

 7 地方公共団体

  ⑴ 普通地方公共団体・・・都道府県・市町村

   @首長制(知事、長)、地方議会、独立委員会

   A条例制定権 「法令に反しない限り」制定が可能

     国によって統一的に処理すべき事項や国が現に実施している事務については条例の対象とはならない。

     ただし、国の法令と併存するように見えても法令とは別の目的に基づく規律である場合、法令が地方の実情に応じた規制を施すことが認容される趣旨である場合(この場合が上乗せ条例)は、条例を定めることができる。

B         住民の地位・・・住民には、長や議員の選挙権のほか、直接請求(条例の制定改廃請求、事務監査請求、議会解散請求、長・議員の解職請求など)権や、住民監査制度・住民訴訟を提起する権利が認められている。

  ⑵ 特別地方公共団体・・・特別区(東京都の区)、地方公共団体の組合、財産区など

 8 情報の管理・公開・・・情報公開法(インカメラ制度など)、行政機関個人情報保護法など

 9 公務員・・・国家公務員法、地方公務員法、国家公務員倫理法など

 10 公物・・・国有財産法、地方自治法など

V 行政作用法

※行政過程論・・・行政作用中に「一般的に」見られる情報の収集、命令の策定、行政処分の発動、契約・行政指導など、行政の国民への「働きかけのしかた」について、その働きかけ方を類型化して考察する方法。それぞれの類型を「行政の行為形式」と呼ぶ。

1 行政行為

行政庁が行政目的を実現するために、法律によって認められた権能に基づいて、一方的に国民の権利義務(作為・不作為など)その他の法的地位を具体的に決定する行為。

 ⑴ 分類

@法律行為的行政行為・・行政庁が一定の法律効果の発生を欲し(効果意思)、これを外部に表示することによって成立する行政行為

○命令的行為・・・国民に一定の作為・不作為の義務を命じる(あるいは逆にその義務を解除する)行為。(自由権の制約)

ア)          下命(納税命令、違法建築物の除却命令)、禁止(営業停止)  

イ)          許可(営業許可、運転免許)   ウ)免除(就学免除)

○形成的行為・・・国民が本来なら有していない特殊な権利・能力などの法的地位を与えたり奪ったり(形を成すように)する行為。

エ)          特許(鉱業権の設定、公企業の特許)、剥権行為  

オ)          認可(農地の権利移転許可)  カ)代理(公法人の理事長の任命)

  A 準法律行為的行政行為・・意思表示以外の判断・認識の表示に対し、法律が(自動的に)一定の法的効果を結合して、行政行為となるもの。

  ア)確認(公職選挙法上の当選人決定)  ク)公証  ケ)通知  コ)受理

 ⑵ 効果

  @公定力・・・有権的機関によって取り消されるまでは、有効性が推定され、相手方、行政機関等いずれもその行為に従わねばならなくなる効力。(行政事件訴訟法等実定法の規定に依ると考えられる)

A拘束力・・・取消されない限り、相手方だけでなく関係行政機関も拘束する効果。(もちろん処分を行った行政機関も拘束される。)

B不可争力・・・一定の期間経過後は(無効である場合を除き)、不服申立て、訴訟ができなくなる効果。公共の秩序のためには、法的関係を早めに安定させてしまう必要がある、という考えに基づく。(ただし、この措置は、実定法の規定に依る)

C不可変更力・・・行政庁の職権による変更・取消しができなくなる効果。(ただし紛争裁断効果を持つ特定の行政行為に関する場合のみ)

D執行力・・・民事判決を得なくても、行政行為を根拠として自力で執行できることになる効果。実定法の規定に依る。

⑶ 行政裁量

@ 羈束行為・裁量行為・・・法律の適用が一義的に決まる行政行為を「羈束行為」、法律の規定が明確でない部分(不確定概念)について、行政庁が独自の判断を加味して行う行政行為を「裁量行為」という。

A     法規裁量と便宜裁量・・・裁量行為のうち、司法審査になじむものを「羈束裁量」(法規裁量)、そうでないものを「自由裁量」(便宜裁量)と呼ぶ。

○裁量の対象が要件認定、効果判断いずれにあるに関わらず、原則として羈束裁量であると考える。(「判断代置方式」を用いて審査)

○法律が行政庁にしかできないであろう専門的判断や、あるいは裁判所では対応できない政治的判断を予定していると考えられる場合には、自由裁量として扱い、裁判所では判断しない。(「裁量不審理の原則」)

○ただし、自由裁量行為でも、裁量権の踰越のある場合は審理の対象となる。 

 ⑷ 附款

当該行政行為の効果を制限したり、あるいは特別な義務を課すため、主たる意思表示に付加される行政庁の従たる意思表示のこと。(行政庁の裁量範囲内で付される)以下のような種類がある。

@         条件・・・行政行為の効果を発生不確実な将来の事実にかからせる意思表示。

A         期限・・・行政行為の効果を将来発生することが確実な事実にかからせる意思表示。

 B 負担・・・授益的な行政行為に付される意思表示で、相手方に特別の義務を命ずるもの。

例えば、公設運動場(公共の施設)の使用許可に当たって利用料を支払う、運転免許にあたり運転者に眼鏡等使用を義務づける。

C 取消権(撤回権)の留保(「行政行為の取消・撤回」の項)

D 法律効果の一部除外(旅費の不支給など。法文に根拠のある場合に限定)

⑸ 行政行為の瑕疵

○無効な行政行為・・・誰でも、いつでもその効力を無視できる→「公定力」「不可争力」の例外(すなわち行政事件訴訟法の取消訴訟の例外→無効等確認訴訟の対象)

○取消しうべき行政行為・・・違法ではあるが有効。裁判所や権限ある行政庁の取消しを待ってはじめて効果を失う→取消訴訟の対象

○行政行為の不存在・・・行政行為そのものが無い、と考えられるもの。誰でも、いつでもその存在・効力を無視できる→無効等確認訴訟の対象

 ※「無効な行政行為」と「取消しうべき行政行為」との区別

イ)実現不可能説(オットー・マイヤー)

ロ)権能付与規定違反無効説(美濃部達吉)

ハ)重大明白説(通説・判例)・・・行政行為が当該行為の根幹にかかわる重要な要件に違反しており、かつ、そのことが客観的に疑う余地なく明白であれば、無効。

@)一見明白説・・・瑕疵が明白である、とは、処分成立の当初から誤認であることが外形上客観的に明白である場合を指し、行政庁がその怠慢により調査すべき資料を見落とした否かには拘わらない。(最高裁昭和36年3月7日判決)

A)客観的明白説・・・一見明白な場合に加え、行政庁が特定の行政処分をするに際しその職務上当然に要求される調査義務を尽くさず、しかも簡単な調査をすることにより容易に判明する重要な処分要件の存否を誤認してなした場合にも、明白な瑕疵があると解する。(東京地裁昭和36年2月21日判決)

ニ)          重大説・・・第三者保護の必要のない場合に、瑕疵の明白性を問題にせずに無効とした例(最高裁昭和48年4月26日判決)。

⑹違法性の承継

当該行政行為でなく、これに先行する行政行為の瑕疵を当該行政行為の瑕疵として主張することができるか。原則として瑕疵は承継されない。

⑺行政行為の瑕疵の「治癒」

  瑕疵ある行政行為の瑕疵が後日の事情の変化によって瑕疵として非難するに足らなくなった場合、行政行為を適法なものとして扱うことがある。

@「瑕疵が治癒された」場合

A     違法な行政行為が「転換された」場合

 ⑻行政行為の取消と撤回

  行政行為は、権限ある機関によって取消されないと公定力によって有効なままであり、期限の到来、条件の成就、義務の履行その他によって効力が消滅するまでは存続し、関係者を拘束する。しかし、公益のために適当でないという状態になったら、効力を消滅させることが求められる。

権限ある機関の取消

@)裁判所・・・行政事件訴訟法・・・違法な行為の取消

A)行政庁(審査庁)・・・違法・不当な行為の争訟取消(職権での取消)

B 行政庁(処分庁)・・・違法・不当な行為の争訟取消のほか、職権での取消・撤回

@瑕疵ある行政行為の職権取消し

行政行為が成立当初から瑕疵を有している場合、行政行為を行った処分庁が取り消しの意思表示を行い、はじめからなかったことにする。(取消の制限の場合あり)

A行政行為の職権による撤回

 瑕疵なく成立した行政行為について、その後の事情変化を理由として、失効させること。

2 行政立法

法規定立行為を行政が行うこと。※「法規」・・・一般的な権利義務規定

⑴行政立法の形式的区分 @政令A府省令B外局規則C独立機関の規則 ☆勅令 

D告示・訓令・通達

ア)告示・・・本来は行政規則であって外部に示すもの。しかし、法規的性格を持つものもある。

イ)訓令・通達・・・上級行政機関が下級行政機関の職務遂行に関して指揮するために発する「命令」。上級官庁の下部機関への命令を一般に通達、文書になっているものを訓令と呼んだり、拘束力ある命令を訓令、基準・方針を示したものを通達と呼ぶ、という説などがある(が、いずれも行政内部に限られるものであることから分類の実益はあまりないとされる)。

 ⑵行政立法の内容的分類

 A 法規命令

(ア)   執行命令・・・憲法73条6号、法的根拠は要しないとされる。

(イ)   委任命令・・・憲法73条6号ただし書き。委任の範囲が明確であることが必要。

ここでいう「命令」は行政が定立した法規をいう。

@)委任の範囲の明確ではない白紙委任のようなものは妥当ではない。ただし、法律全体の構造から授権範囲が読み取れればよい。

A)再委任・・・認められる。

B 行政規則・・・国民の権利義務と直接関係ない、行政内部の定め

 

3 行政計画

行政上の事務や事業を実施し、または行政上の政策を形成するために、行政機関によって策定された行政の指導目標をいう(青写真)。条件プログラム(行政立法)に対し、目標プログラムともいわれる。特に、関係行政庁の判断を拘束する計画のことを拘束計画という。行政計画は法律の規定が無ければ作れないものではない(それ自体は「法律の留保」の対象外)が、各種の権利制限の効果を持つ拘束計画(都市計画など)は行政立法に類似し、@)法律の根拠、A)法律に法的効果や計画の限界が示されること、B)法律に関係人の計画策定参加手続規定が定められること が求められる。

☆計画策定手続・・・一般的に考えられるのは、
イ)公告・縦覧、意見書の提出、  ロ)公聴会、  ハ)審議会・・・利害調整と専門家の意見聴取、

ニ)関係機関間の協議、  ホ)パブリック・コメント    ニ)住民の意思調査など

 

4 行政契約

行政庁が国民と協議し、その任意の同意を求め、相互の合意(契約)により法律関係を取り結ぶ、行政目的実現の手段として締結する契約のこと。

 次の二つの観点から分類されることが多い。(@とAの@・Aは対応関係にないので注意)

@     目的別分類

@)公法関係の設定、変更または廃止を行う「公法契約」

A)それ以外の目的のために結ばれる「私法契約」

A     内容別分類

@)組織法上の契約(行政主体間などで行われる契約)

A)作用法上の契約(行政主体と私人との間の契約)・・・水道給水をはじめとする公益事業や公営住宅の利用など(ただし、児童福祉施設への入所、要介護認定、施設の利用、国民年金の受給などは行政行為として構成されている。・・・「形式的行政行為」
5 行政指導

行政庁が助言、指導、勧告などの方法で、国民に対し一定の作為・不作為を要望し、国民の自発的協力を得て、行政機関の意図するところを実現しようとすること。
@ 分類

・助成的指導・・・ア)情報の提供 イ)技術的助言

・規制的指導・・・ア)法定指導 @)行政行為の事前代替的指導 A)その他

イ)法定外指導 @)紛争調整(調整的指導) A)能動的指導

A 機能

行政指導は一方的に権利関係を定めるものではなく、国民・住民の行政に対する強制力のない事実上の協力関係にほかならないから、法律の根拠を要しない(法律の留保の対象にならない)と考えられる。この行政指導の基本的な性格から、法の空白の補充などの長所、責任の所在があいまいなどの短所が導かれる。

 

6 行政上の強制措置・行政調査

法が一般に予定しているのは、法律により行政庁が行政行為により国民に作為・不作為の義務を課した場合、国民がその義務を履行して行政上必要な状態(公益の守れる状態)を作り出す、という流れ。この流れに沿わない場合やこの流れに沿うことを確保するため、法は必要な場合に行政上の強制措置を認めている。

⑴ 分類

@国民があらかじめ命じられている義務を履行しない場合、行政側が義務の履行を強制すべく実力を行使する。→行政上の強制執行

A行政側が緊急の必要を満たすために、あらかじめ国民に義務を課すことなくいきなり強制力を行使する。→行政上の即時強制

一般に合わせて「行政強制」といい、このほか、B行政罰とC「その他の履行確保のための手段」がある。B・Cは「行政上の義務違反に対する制裁」である。行政上の即時強制に近いものとして、D「行政調査」がある。

⑵ 行政強制 行政機関が行政目的を実現するために国民の身体や財産に有形力(実力)を行使する作用。

@ 行政上の強制執行

イ)代執行

代替的作為義務(他人が代わって行うことのできる作為義務)の強制手続。行政庁又は行政庁の指定する第三者が、義務者本人に代わって義務となっている行為を実施し、義務が実現されたのと同じ状態を作り出す。その上で、費用を本人から徴収する。

ロ)執行罰

非代替的作為義務(他人が代わって履行できない作為義務)及び不作為義務(何もしないことは代わりにはできない)の強制手続。一定の期限を付して義務者に義務の履行を促し、それまでに履行しない場合は一定額の「過料」を課すもの。過料の圧力で義務の履行を確保しようとするもので、「間接強制」という言い方もある。時期までに履行されなかった場合は、再度時期を指定して過料を課す。

ハ)直接強制

 義務者が義務を履行しない場合、直接、義務者の身体や財産に実力(有形力)を加えて義務の内容を実現する手続。

ニ)強制徴収

 金銭債権に関する義務を履行させるもの。国税徴収法に定められている「国税滞納処分」が代表例。

A 即時強制

 緊急を要し相手方に義務を命じていたのでは目的を達しがたい場合、一定の相手方に義務を命じることなく、行政機関がいきなり有形力を行使して必要な状態を作り出す事実行為。

⑶ 行政調査

行政機関が、私人の行為に対する規制などの行政作用を公正に行うために、その予備的活動として、法律の定めに従い、@関係人に書類等の提出その他報告を求める、A工場・事業場・家宅などに立入る、B身体や財産について調査するなどを強制的(受け入れないと罰則があるものが多い)に行う行政作用。

⑷ 行政上の義務違反に対する制裁

行政上の義務違反者に対し制裁として不利益を課し、その威嚇的効果によって義務の履行を確保しようとするもの。

@ 行政罰

イ)         行政刑罰

行政上の義務違反に対し科される「刑法に刑名のある刑罰」をいう。(懲役、禁錮、罰金、拘留、科料)

ロ) 秩序罰

行政上の義務違反であるが、直接的には公益を侵害しないような軽微な形式的違反行為に対して科される「過料」という制裁をいう。

B     その他の制裁措置

 行政がその責務を果たしていくために、行政罰以外にも、許認可の停止・取消、経済的負担、違反事実の公表など簡易な制裁方法が工夫されている。

補論

⑴ 公法関係論

 法律を「公法」と「私法」に分けて分析していく「公法・私法二元論」に基づき、公法関係を行政法の対象とするという考え方。この考え方の有力説である「折衷説」では、「行政上の法律関係」を以下のように(三つに)分類する。

@         国や公共団体が優越的な立場に立って公権力を行使し、国民に命令強制する作用・・・租税の賦課、違反車両の撤去、営業免許(禁止の解除)など

国家の統治権の発動として行われる行政分野であり、「本来的公法関係」と呼ばれる。このような行政の作用に関わる法は、国や公共団体と国民の間の「権力関係」を規律するものであり、対等者間の利害の調整を目的とする私法とは異質な、行政固有の原理に立脚した法となる。

A         国民と対等な立場に立って実施する非権力的作用・・・給付行政にかかわるような経営的な活動(水道・バス)や財産管理(公園の管理)などの作用。

行政主体と国民は支配服従ではなく基本的に対等な関係に立ち、私法関係と本質に違いはない。

ア)ただし、すべてを私法原理に任せてしまうと公益の実現・行政目的の達成に支障が生じる。中でも公物の管理に関する法律や医療・福祉に関わる分野では、公平性や採算の度外視など、私法原理とは異なった特別な法的扱いがなされる。このような分野は「伝来的公法関係」「管理関係」)と呼ばれる。

 イ)これに対し、行政が営利・独立採算を旨として行う経済的経営活動の分野(公営住宅など)は、行政の作用に関わるとはいえ、私法と共通の原理に立つとみられ、これらは「私経済関係」として通常の民事法と同質のものと考えられる。

 ・法律上の権利についても、公権と私権に区別される。

・行政権は法律により個別的・具体的に授権された限度で国民に対し優位した地位をもつに過ぎず、公法関係という分野を想定して、民事法とは別の公法原理が支配する、ということを想定しなくても、行政法規を分析していけば行政法の働きは考察しうるとする、公法私法二元論への批判が有力となっている。

 

⑵ 特別権力関係

・行政法の伝統的学説では、個人が、特定の法律原因により、行政と特別な社会的接触の関係に入ると、「法律による行政」の要請が緩和され、このような個人は、行政との間で特別な義務(他方、特別な権利もあるわけだが)を負うことになる(特別権力関係という)と考えられてきた。

・しかしながら、国会を唯一の立法機関とし、基本的人権の尊重を基本原理とする日本国憲法の下で、国民と国・公共団体との関係につき、「法律による行政」の対象から除外される「特別権力関係」という分野をみとめる必要性はあるのかどうかについて、議論がある。

⑶ 行政手続法

@目的

A申請に対する処分の手続

B不利益処分の手続

C聴聞手続き

D弁明の機会の付与

E不利益処分の理由の提示

F行政指導に関する定め

G届出

H意見公募手続(パブリックコメント規定)

I地方公共団体の責務

 

W 行政救済法・総論

私人と行政主体の間の争いに関する法の定め。

⑴ 総論・・・次の二つの面がある。

@     行政の活動によって受けた損失を金銭によって填補する場合

ア)損失補償・・・公共事業の実施やその他の行政作用が営まれるに際して、国民の財産が公共のために利用されたり、その利用方法が制限されるなどして特定人に不利益が及んだ場合、社会全体(国家)がその損害を填補して負担の公平を期する制度(憲法29条3項)

イ)国家賠償・・・違法な行政活動により国民の生じた損害を金銭で補填する制度(憲法17条、国家賠償法)

⇒このような金銭面での填補の観点から私人を救済しようとする法律のはたらきを「国家補償」という。

 

行政活動そのものの効力を争う場合

ウ)行政不服申立・・・行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為に関して不服のある者が、行政機関に対して不服を申し立て、その違法・不当を審査させ、違法・不当な行為の是正や排除を請求する手続(行政不服審査法、個別法)

エ)行政事件訴訟・・・行政作用によって国民に具体的な不利益状態が生じ、または生じるおそれがある場合に、国民が裁判所に訴えを提起し、行政権の行使にかかわる作為・不作為の適法性につき審理を求め、違法な行政作用によってもたらされた(もたらされるおそれのある)違法状態を排除して権利利益の回復・実現を求める訴訟手続(行政事件訴訟法)

⇒このような、違法な行政活動の効果の排除の法的手続きを「行政争訟」という。 

 

1 損失補償

@ 適法な公権力の行使によって加えられた損失を償うことをいう。(「賠償」とは違う)

・根拠・・・憲法29条3項は財産権の侵害となる公用収用や公用制限には補償が必要であるという法的な効果を持っている(実定法効果説)。

さらに、最高裁判例は、法令上補償の定めの無い収用等の規定は適法有効であり、財産権を収用等された者は、直接憲法に基づいて補償請求権が発生する。(補償請求権発生説)としている。

A「財産権に内在する社会的制約」の考え方

・憲法29条2項は、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」としている。財産権が制約されるとしても、いかなる場合にも無条件に補償請求権が発生するわけではなく、次の三つの要件が必要とされている。

@)公共の利用に供するための財産侵害であること。

A)社会生活において一般に要求される受忍の限度を超えるほど本質的なものであること(実質的基準)

B)平等原則に反する個別的な負担であること(形式的基準)

B憲法29条3項の「正当な補償」とはどのような内容をいうか。

ア)相当補償説・・・公正な算定の基礎に基づき算出した合理的金額を補償すればいい。(最高裁昭和28年判決(農地改革に関するもの)

イ)完全補償説・・・収用される財産権の客観的価値全額を補償すべきである。(最高裁昭和48年10月18日判決)
土地収用法における損失の補償は、・・・その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復をはかることを目的とするものであるから、完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくならしめるような補償をなすべきである。

現在では、Aの完全補償説が判例の立場となっている。

2 国家賠償

違法な行政活動について、国民の損害を金銭で填補するものが「国家賠償」である。

@公権力の行使に関する賠償(国家賠償法第1条)

・「公権力の行使」の概念については狭義説・広義説があるが、実態的にはこの概念に入らなければ民法の不法行為責任になるというだけなので、あまり意味はない。

・国又は公共団体が責任を負う理由については、次の2説あり、代位責任説が判例。公務員の故意・過失を要することから、判例では過失の客観化が進んでいる。

代位責任説・・・公務員の違法行為は国家の行為ではなく、それによる賠償は公務員が責任を負うべきこと。しかし、公務員の使用者である国・公共団体に賠償責任を負担させることにした。

自己責任説・・・権力にはつねに濫用の危険が伴うものであり、国が公権力の行使を公務員に委ねている以上、その濫用から生じる責任については、授権者である国が自ら負うべきである。

・「公務員がその職務を行うについて」行われたものでなければならない。公務員の行為で、客観的にみて職務行為の外形をそなえている行為であれば、公務員の主観的意図はとわれない。(これを外形主義又は外観主義という。昭和31年最高裁判決)

・違法な加害行為の存在

A 営造物の設置管理の瑕疵(国家賠償法第二条)

判例の基本的立場は、@営造物の物的安全性が欠如している場合に、A無過失責任が発生する、B財政的理由は免責事由とならない、の3原則とされる。

○公の営造物の設置・管理の瑕疵

・「設置・管理の瑕疵」とは物自体に欠陥があって、「通常有すべき安全性を欠いている」状態(物的欠陥説・客観説)

・判例には、安全管理義務違反の考え方も導入されている。

○便益提供施設と危険防止施設

・道路、公園、学校などの便益提供施設が通常具えるべき安全性を欠く状態であるのに、管理者がこれを「どうぞ使ってください」と利用に供して利用者などに損害を発生させた場合は、三原則が適用される。

・しかし、堤防、防波堤など危険防止施設の場合は、三原則はストレートに適用されるべきなのか。もともと危険な状態が起こり得、それを防ぐための施設であるから、予想を超えた災害などが起こった場合には、国家賠償が認められないケースがある。

3 行政不服申立て

・現在も影響を及ぼしている又は及ぼそうとしている行政の活動(活動しないという不作為の状態を含む)について、それが国民の権利利益を違法(あるいは不当に)侵害する場合、国民の側から取消しその他の是正を求める制度が必要である。これを行政庁に対して求める制度が「行政不服申立て」である。

⑴ 行政不服申立ての対象事項・一般概括主義

@     処分・・・行政庁が法令に基づき優越的立場において、国民に対し権利を設定し義務を課し、その他具体的な法律上の効果を発生させる行為(事実行為で継続的性質を有するものも含む)・・・行政行為、即時強制で継続的性質を持つもの、権利義務を具体的に規定する行政準則その他が該当すると考えられる。

A     不作為・・・行政庁が私人の申請に対し応答しないでいある状態

⑵ 不服申立ての種類

行政不服申立てには、次の3種類がある。このうち、@の審査請求が原則(審査請求中心主義)

@     審査請求・・・行政庁の処分(又は不作為。以下同じ)に対して、処分庁(又は不作為庁。以下同じ)以外の行政庁に対し不服を申し立てる。申立て先は直近上級行政庁が原則であるが、法律によって第三者機関が指定されている場合がある。(国税不服審判庁など)

A     異議申立て・・・行政庁の処分に対して、処分庁に対し不服を申し立てる。

B     再審査請求・・・審査請求の裁決に不服がある場合に、さらに不服を申し立てる。

     裁決(審査請求)または決定(異議申立)

・却下

・棄却・・・不服申立て人の主張に理由がないとして、処分を維持するもの。

※特殊な場合として、申立て者の主張を認めるが、「処分を取り消し又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは」「当該処分が違法又は不当であることを宣言」した上で、申立てを棄却する事情裁決・事情決定という方法がある。

・認容・・・不服申立て人の主張に理由があるとして、処分の全部・一部を取り消す、あるいは処分の一部を変更する。この場合、申立人の不利益になる変更は禁止されている

※審査の対象は、処分(不作為)の違法か適法かの問題にかぎられず、裁量の当不当(踰越が無くても)にも及ぶ。

4 行政事件訴訟

・「行政事件訴訟」とは、行政作用によって国民に具体的な不利益状態が生じた(又は生じるおそれがある)場合に、国民の側から裁判所に訴えを起こし、行政の活動にかかわる作為・不作為の違法性につき審理を求め、違法な行政作用によってもたらされた(又はもたらされるおそれのある)違法状態を排除して権利利益を回復・実現する訴訟手続。

⑴ 基本的な問題点

@     「統治行為」の理論

 高度の政治的判断を伴う行為については、もっぱら法律的判断のみを使命とする司法裁判所の審査にはなじまない、という理論。

A     事件争訟性があるかどうか

@)争いが裁判所で判断できるまでに成熟していない(やってもまたやり直しになりうる)やA)訴えの利益に欠けるものは司法審査の対象にならない。

B     行政庁の第一次的認定判断権

行政庁が第一次的判断を行う前に裁判所がこれに代わって判断することは、行政権の独立を乱すことになるとされていた。→この点は平成16年改正で改められた。

C     行政裁量事項

裁量範囲の踰越・裁量権の濫用がない(違法ではない)裁量行為については、法律が判断を行政権にゆだねていると考えられる(判断過程の審理は行う)。

⑵ 行政事件訴訟の類型

・行政事件訴訟には、次の四つの類型がある(行政訴訟法3条@)

ア)抗告訴訟  イ)当事者訴訟  ウ)民衆訴訟  エ)機関訴訟

このうち、ア)とイ)は個人の権利利益の保護を目的とする訴訟(主観的訴訟)であり、裁判所法でいう「法律上の争訟」である。ウ)とエ)は、客観的な法秩序の適正維持を目的としている訴訟(客観的訴訟)であり、裁判所法3条により「法律において特に定めがある場合」にのみ提起することが許される(行政事件訴訟法42条)

ア)抗告訴訟

@     処分の取消しの訴え

 行政処分を無かったものとすることを求める訴え。

A裁決の取消しの訴え

 審査請求等によりなされた裁決を無かったものとすることを求める訴え。処分と裁決(による不服申立の棄却)とがある場合、「原処分主義」を採用している。

B無効等確認訴訟

処分・裁決の存否又は効力の有無を争う訴訟。公定力などを無視して提起できる訴訟であることから、その提起には制限がある。争点訴訟や公法上の当事者訴訟で権利保護ができる場合には、無効等確認訴訟は使えない(行政訴訟法36条)とされる。(補充性)

C不作為の違法確認訴訟

 行政庁が(私人からの)法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分(許可、不許可など)をすべきにもかかわらずこれをしないとき、何もしていないことについての違法の確認を求める訴訟

D義務付け訴訟

 行政庁に「こういう行為をしろ」と求める訴訟(平成16年改正事項)

@)行政庁が一定の処分をすべきであるのにしない場合、一定の処分を求める訴訟(危険な状態を放置しているとき、規制を行うように行政に求める(行政介入請求)訴訟)

A)国民が法令上の申請に基づいて行政庁が一定の処分をすべきであるにもかかわらず、しないときに、一定の処分を求めて提起する訴訟(→Cとセットになる場合と@ABとセットになる場合がありうる)

E差止め訴訟

 行政庁が一定の処分又は裁決をしようとしている場合において、これをしてはならない旨命じることを求める訴訟。

F無名抗告訴訟

イ)公法上の当事者訴訟

@ 実質的当事者訴訟

 抗告訴訟が行政庁の公権力の行使について争う「行為訴訟」であるのに対して、当事者訴訟は現在の権利関係を争う「権利訴訟」である。

A     形式的当事者訴訟

当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で、法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの。(土地収用委員会裁決への不服→実質は裁決への抗告訴訟の性質を持つ)

ウ)民衆訴訟

国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、自己の法律上の利益に関わらない資格で提起されるもの。(選挙法に基づく選挙訴訟や地方自治法の住民訴訟がその例である。)

エ)機関訴訟 

国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又は権限行使に関する紛争についての訴訟。行政部内の争いは法律上の争訟ではない。特に法律が裁判所の公正な裁定を求める場合にのみ提起できる。

@     地方自治法176条(長と議会の争い)

A     地方自治法251条の5、252条の国等の関与に関する訴え

⑶ 行政事件訴訟の訴訟要件

訴訟要件とは、裁判所に「却下」ではなく、本案審理に入って本案判決(棄却又は認容)を出してもらうための要件。

@     行政庁の処分の存在(「処分性」)

取消訴訟は、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」の違法を主張してその取消を求める訴訟である。審理の対象となる「処分その他の行為」がすでに存在していることが要件となり、ここで、行為の権力性と紛争の成熟性がチェックされる。

A自己の法律上の利益に関係のある違法を主張すること(原告適格)

・訴訟を起こすためには、訴える側に「訴えの利益」がなければならない。「訴えの利益」は、次の両面に分類される。

@)原告適格(主観的側面)・・・取消訴訟を提起できる者は、処分の取消につき「法律上の利益」(行訴法9条)をもつ者でなければならない。また、この「法律上の利益」の有無は、処分の根拠法令だけでなく、広く関連する法令の趣旨・目的をも視野に入れて、違法な処分によって侵害される原告の利益の内容や性質(財産権侵害か生命・身体への侵害かなど)、侵害の態様や程度を斟酌して判断すべきものとされる。(9条2項)→平成16年改正により2項追加

 原告適格を認める「法律上の利益」については、「法の保護する利益説」と「保護に値する利益説」があった。通説・判例は「法の保護する利益説」をとりつつも、近年、16年改正後の9条2項に盛り込まれた考え方をとってきており、現在においては両説の違いはほとんどないといわれる。

A)狭義の「訴えの利益」(客観的側面)

 当事者に現実的な救済を与えることができるかどうか。取消し判決が下されても、既に処分に基づく工事等が実施されて原状回復が不可能な場合や、営業停止の期間が過ぎて処分が効力を失い、回復される法律上の利益がなくなった場合など、処分取消によって原告の救済が現実に達成できないのであれば、訴えの利益は認められない。(損害賠償や損失補償の問題にはなりうる。)

B被告適格

C裁判所の管轄

D行政不服申立との関係

E出訴期間

⑷本案審理の進め方

 以上の要件が満たされると本案審理に入る。執行不停止の原則(民事保全法の仮処分の排除)が適用される。ただし、要件が満たされれば執行停止される制度があるほか、平成16年改正で「仮の義務付け・仮の差止め」制度が創設された。(37条の5)また、内閣総理大臣の異議制度がある。

審理では、職権証拠調べが適用される。・・・必要があると認めるときには裁判所の判断で、証人喚問、物証提出、現場検証などを進めることができるとする制度。(職権探知ではない。)

・違法性の判断は、処分時点(処分時説)

・証明責任 民事訴訟法では、自己に有利な法規の適用の要件事実について主張したい者が、証明責任を負う、とされる。行政事件では、行政庁が処分の適法性の証明責任を負う、裁量行為の場合、裁量権の逸脱、濫用の証明責任は、取消請求をする原告が説明するのが原則、例外的に、専門技術的判断の適否については被告行政庁に合理性の証明責任があるとされた。(最高裁平成4.10.29伊方原発訴訟判決)

・判決

@)訴訟判決(却下)・・・訴訟要件を欠いている場合になされる判決

A)本案判決

イ)請求認容・・・原告の請求に理由があるとする判決。「処分を取消す」。処分の効力をただちに消滅させ、遡ってなかったことにする効力がある(「形成力」という)。

 なお、特殊な場合として、裁判所が事実審理を行政府に差し戻すという場合がある。(実質的証拠法則に基づき、行政庁に事実認定の権限がある場合。独占禁止法81条など)

ロ)請求棄却・・・原告の請求に理由がないとしてこれを排斥する判決。

ハ)事情判決・・・処分を取消す場合であるが、公益擁護の観点から請求を棄却する判決。判決主文において、処分が違法であることを宣言する必要がある。