行政法12(19.7.2)
行政作用法各論A
行政行為(2)
2⑵ 準法律行為的行政行為
キ)確認・・・特定の事実または法律関係の存在・不存在を公的に判断する行為であって、法律により法律関係を確定させる効果を有するもの
・ 選挙における当選人の「決定」(公職選挙法)
・ 恩給の「裁定」(恩給法)※ただし、特許に類するとする説もある。
・ 建築「確認」(建築基準法)※ただし、許可や認可の一種とする学説もある。
☆行政による事業規制の法的構成
届出制(事業を行うこと、若干の関連事項などを届け出る)
登録制(一定の資格要件が定められている場合などに、資格要件を証明して届け出る)
許可制(申請者に法定の欠格事項がないか確認して許可する)
特許制(事業参入について厳しい審査。事業の実施についても濃密な監督がある)
ク)公証・・・特定の事実または法律関係の存在を公に証明する行為であって、法律により法律効果の発生が予定されているもの
・ 戸籍への記載(戸籍法)・・・国民として扱われる
・ 弁護士登録(弁護士法)・・・弁護士業務ができる
ケ)通知・・・特定人ないし不特定多数の者に対して一定の事項を知らせる行為であって、これに法律が一定の法律効果を付しているもの
・ 納税の督促(税法)・・・これ自体は税金を確定するものではないが、これを放っておくと強制徴収手続などが始まることになる。
コ)受理・・・他人の行為を有効な行為として受け付ける行為で、これにより法律上一定の効果が発生するもの
※行政手続法(別項)が、「受理しない」という行政の判断を排除するため、「申請の届出は到着(事実行為)によって効力を生じる」ことを明確にしたため、現段階では受理を論じる場はあまりない。
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3 行政行為の効果 ・・・行政と司法の関係
4 行政裁量 ・・・行政と立法・司法の関係
5 行政行為の附款 ・・・行政裁量の一場合(4と関連)
6 行政行為の瑕疵 ・・・行政と司法の関係(3と関連)
7 行政行為の取消・撤回 ・・・行政行為の瑕疵に関する場合を含む(6と関連)
・行政行為は「法律の留保」の対象となるかどうか→立法との関係
・行政行為に関する争いは、「法律上の争訟」となるかどうか→司法との関係
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3 行政行為の効果
行政行為には通常次のような効力がある(と言われる)。@BDは司法での取り扱いについての行政行為の特殊性に関わること。ACは行政権内部の問題。
@公定力・・・(無効である場合を除き)有権的機関によって取り消されるまでは、有効性が推定され、相手方・第三者、行政機関、いずれもその行為に従わねばならなくなる効力。(上位法優先の原則の例外)
☆上位法優先の原則・・・憲法に反する法律は無効、民法の強行規定に反する契約は無効など
最高裁昭和30年12月26日判決(百選66)
「行政処分は、たとえ違法であっても、その違法が重大かつ明白で当該処分を当然無効ならしめるものと認むべき場合を除いては、適法に取り消されない限り完全にその効力を有するものと解すべき・・・」
(例)
1 公務員の懲戒免職→身分関係確認訴訟ではなく、先に懲戒処分そのものを争う必要がある(国家公務員法・行政事件訴訟法に排他的管轄がある)。
2 税金の納付→通常の金銭債務のような債務確認訴訟ではなく、税金の納付を命じた処分そのものを争う必要がある(国税通則法・行政事件訴訟法に排他的管轄がある)。
(注1)法律上、「公定力」という言葉が出てくるわけではない。
○行政行為(行政処分)に関しては、行政事件訴訟法、行政不服審査法に特別の手続きが定められている。関係者がいつでもその無効を主張して行政行為の効力を否認することができる、のであれば、これらの法律によって、特別の争訟手続きを定めたり、訴訟提起の期間を定めたりしているはずがない。このことから、公定力の存在が推測される。
○一方で、逆に、これらの手続き規定によってはじめて、「取消されるまでは、有効なものと扱われる」とされているのだ、とも解せられる。(「行政行為なら公定力がある。」のではなく、「実定法により公定力というべきものを付与されている。」とも言いうる。
(注2)適法か有効か
○伝統的な考え方・・・美濃部達吉、田中二郎・・・適法性推定
最高裁昭和39年10月29日判決(百選156)
「行政庁の・・・は仮りに違法なものであっても、それが正当な権限を有する機関により取消されるまでは、一応適法性の推定を受け有効として取り扱われる・・・」
○現在の有力な考え方・・・行政行為はたとえ違法であってもこれを無効と取り扱うと、公益の円滑な実現が妨げられたり、社会の安定が阻害される可能性があることから、「違法であっても「有効」と扱い、国民は一応これに従うことにしよう」と現行法が要求している、と考える。
→「行政の迅速性・法的安定性のために実定法により行政行為に認められた仮の効力」
A拘束力・・・取消されない限り、相手方だけでなく関係行政機関も拘束する効果。(もちろん処分を行った行政機関も拘束される。)
(行政組織法の分野でいる「権限分配の原理」・・・各行政機関の権限は、法令により、事項別・地域別に管轄が定められており、ある行政庁がこの範囲内で行った行為は他の行政庁を拘束するとともに、その行政庁の権限範囲内の事項を他の行政庁が行うことはできない。)
B不可争力・・・一定の期間経過後は(無効である場合を除き)、不服申立て、訴訟ができなくなる効果。公共の秩序のためには、法的関係を早めに安定させてしまう必要がある、という考えに基づく。(ただし、この措置は、実定法の規定に依る)
○行政事件訴訟法第14条 取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
2 取消訴訟は、処分又は裁決のあつた日から一年を経過したときは、提起することができない。・・・
○行政不服審査法第45条 異議申立ては、処分のあつたことを知った日の翌日から起算して六十日以内にしなければならない。
C不可変更力・・・行政庁の職権による変更・取消しができなくなる効果。(ただし特定の行政行為に関する場合のみ)
行政庁は違法・不当な行政行為をしたと判断した場合は、進んでその行政行為を取消すべきもの(行政行為の取消)。異議申立の決定や裁決のように、紛争を裁断するために行われる行為については、争いごとを終息させるのが目的であるから、蒸し返しを防ぐために行政庁自身でも取消・変更ができなくなると考えられる。
最高裁昭和29年1月21日判決(百選68)
「・・・裁決は、他の一般行政処分とは異なり、特別の規定がない限り、・・・裁決庁自らにおいて取消すことはできないと解するを相当とする。」
D執行力・・・判決などの「債務名義」(民事執行法22条)を得なくても、行政行為を根拠として自力で執行できることになる効果。
しかし、執行力は特別に法律で認められている場合にだけ存在するもの(行政強制の項参照)であり、この命題の維持は実定法の規定に依ることになる。
4 行政裁量
行政裁量論は、立法と行政、行政と司法の関係に関わるもの。
⑴ 行政裁量論
「Aという概念に含まれる(と考えられる)aということが起こった(と考えられる)ときに、Bという範囲内に含まれる(と考えられる)効果のうちbという効果をもたらすように行為を行うかどうか。」
を誰(立法か、行政か、司法か)が決めるのか、という問題。もちろん立法裁量、司法裁量という概念も存在するが、行政がどこまで決められるか、という観点からの考察が主となるので、「行政裁量」論といわれる。
○立法=一般則の定立:「一般的に」Aが起こったら、Bをする。と決めるのは、本来は、立法の仕事と考えられる。
○行政=具体的当てはめ:aという事象について、これがAであるかどうかを確定し、Bの中からbという結果を選定して、そうなるように行政行為を行うのが行政の仕事と考えられる。
○司法=事後評価:行政の判断について、果たしてその判断が違法不当ではなかったか、について事後的に評価するのが司法の仕事と考えられる。
上記で「考えられる」となっているように、それぞれの仕事は少しづつ入り組んでおり、立法がどれぐらいのことを行政に委ね、司法が「行政にゆだねられている判断」のうちどの部分について事後判断するか、について検討することになる。
⑵ 行政行為の発動過程
@ 法律要件の解釈・・・「AのときBにしなければならない」のAの解釈。
A 事実認定・・・aということが起こったことを認定。
B 法の適用・・・aはAに該当するか否かの認定。
C 行為内容の決定と決断・・・Bにしなければならないので、bを命ずる。
この場合に、a= Aかつb=Bであれば、行政行為の内容は「一義的に明確に法定されている」ということになる。この場合は、行政庁は事実の確定さえできれば、行政行為の内容を自動的に決めることができる。
このような場合、この行政行為を「羈束行為」という。(しかしこの場合でも、時の裁量や伝達方法の裁量などが羈束されずに残ることになる)
※ 「法律による行政」との関係
「法律による行政」の考え方からは、伝統的には、すべての行政行為は「羈束行為」であることが望ましい、とされていたが、現実の行政は、専門性が求められる場合、複雑・流動的で要件を一義的に決められない場合があり、行政のあり方を厳格に定め行政の活動を硬直化させるのは立法のあり方として適切でないというのが現在の考え方である。(「法律による行政」の例外)
では、来週は、立法と行政の関係を「不確定概念の解釈」という観点から、司法と行政の関係を「司法審査の範囲」という観点から見ていくことにします。