行政法9(19.6.18)

 

⑶ 情報公開(前回の続き)

 ○行政機関情報公開法(平成11法42)の内容(途中から)

・行政機関の移送、第三者の意見提出機会などの手続(12、13)

・不服申立て→行政機関の長→情報公開・個人情報保護審査会(インカメラ審理)(18〜)

・特定管轄(行政事件訴訟法に受け継がれた)

・会議公開

・地方公共団体の情報公開条例(26)

※行政手続オンライン化法(行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律)(平成11年)

 

⑷ 個人情報保護

行政機関が情報を収集・公開する以上、収集された個人情報の保護が前提とならなくてはいけません。「個人情報保護」についても、行政機関個人情報保護法が制定されています。

プライバシー保護8原則(1980経済協力開発機構(行政部会))

1982(昭和57年)行政管理庁プライバシー保護研究会報告

個人情報保護条例(昭和59年福岡県春日市)

1988年「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」

2003年「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」「個人情報の保護に関する法律」

○行政機関個人情報保護法(平成15法58)の内容

     行政機関は、必要な範囲内特定の利用目的に供するため個人情報を保有することができる。(3@)

     取得目的の明示、正確性、データの適切管理(漏洩、滅失、毀損しないよう)、利用目的以外の目的のための利用の制限(3〜6)

     個人情報ファイルの作成・保有に際しての公表(11)

     個人情報ファイル+文書上の情報=保有個人情報(3B)

     「何人も」自己に関わる個人情報の開示を請求することができる。(12)(情報公開法では、自己に関する情報であっても、プライバシーに関わることなどは非開示とされる)

     自己情報の非開示の場合→本人の生命・健康、第三者プライバシー、公務の適正遂行等を害するおそれがある場合(14)

     自己に関する情報に謝りがあると思料する場合→訂正請求権(27)

     個人情報の違法取得などがあると思料する場合→利用停止請求権(36)

     開示請求等→30日以内に当否を判断(19)

     不服申立→情報公開・個人情報保護審査会への諮問(42〜)

(個人情報保護法について)

     個人情報取扱事業者への規制を定める。保有個人情報保護団体の認定制度・苦情処理

     論点:適用除外(50条1項)(特に報道について)

 

⑸ 廃棄・保存

  文書管理規則(情報公開法22)による廃棄年限の定めまでは保存

  歴史資料としての保存:国立公文書館法15条1項

 

行政作用法総論

ここから、「行政組織法」から「行政作用法」に入ります。国や公共団体はどのような行政作用を行っているか、を法的な側面から分析して考察するのが「行政作用法」の分野。分析の観点はいくつかあります。

@「行政の行為形式」による考察 A行政の作用の目的による考察 B公法関係・私法関係に分類する考察

本講義では、@の考察(行政過程論)を中心に説明します。Aについてはこの中にもいろんな見方がありますが、南博方さんの分類を参考に挙げておきます。Bについて、@を一通り見たあとで説明します。

 

⑴ 行政の行為形式による分析→行政過程論
行政作用中に「一般的に」見られる情報の収集、命令の策定、行政処分の発動、契約・行政指導など、行政の国民への働きかけのしかたについて、その働きかけ方を類型化して考察する方法

     働きかけ全体のプロセスを「行政過程」といい、「行政過程」を考察する学問的アプローチを「行政過程論」という。

     「行政過程」の中で行政機関が実施する行為を活動形式別に類型化したそれぞれの類型を「行政の行為形式」と呼ぶ。行政過程論においては、このそれぞれの「行政の行為形式」について、その意義、性質、要件、効果などを考察することになる。

 

 

⑵ 行政過程に関する三段階モデル(「古典的モデル」)

 

法律→   行政行為   →  強制執行

 

○税金    法律・納税 → 税務署長・下命 → 国民が怠るとき・強制徴収

○風俗営業  法律(禁止)→ 公安委員会・許可 → 禁止に従わない・罰金

 

※「モデル」というのは豊かな現実を切り取ってパターン化するもの。逆にいえば、現実はモデルに束縛されない。

 

・現代行政の複雑性→法律で行政のあり方を詳細・具体的に決めておくことは困難であり、また、実態に即した発動を求める必要。

     行政は、法律の示す抽象的な法の目標を具体化していく政策形成過程。行政庁自身に、法目的の実現に向けた方向付けのため、行政立法による基準化や事態に即応した計画による行政活動の目標策定を行わせ、個別具体の行政活動を実施することが適切。

     また、行政行為という権力的手段以外にも行政の活動は多岐に及んでおり、これらについても法的な統制が必要と考えられるようになった。

 

 

⑶ 四段階モデル

  法律  

↓ 

行政準則(行政立法・行政計画)

 ↓

行政の執行(行政行為、行政指導、行政契約など)

 ↓

実効性確保(行政強制など)

 

ア)行政立法・・・法律自体では実施すべき行政施策の目的や要件・内容等につきおおまかに決めておき、細部や技術的な事項についてはそれぞれの担当部局がその専門的知見に基づいて定めるよう、行政権に「命令の定立」を委任すること。委任命令・執行命令の別がある。

 

イ)行政計画・・・行政活動を行うに先立ち、行政庁が提示する具体的な行政目標となるイメージ(青写真)とそれを実現するための諸施策を体系的に提示したプログラム。条件プログラム(行政立法)に対し、目標プログラムともいわれる。

 

ウ)行政行為・・・行政庁が行政目的を実現するために、法律によって認められた権能に基づいて、一方的に国民の権利義務(作為・不作為など)その他の法的地位を具体的に決定する行為。下命、許可、認可、確認などに分類される。

 

エ)行政指導・・・行政行為の形で国民に作為・不作為を義務づけるのではなく、行政庁が助言、指導、勧告などの方法で、国民に対し一定の作為・不作為を要望し、国民の自発的協力を得て、行政機関の意図するところを実現しようとすること

 

オ)行政契約・・・(行政庁が公共のサービス活動を遂行する過程で、国民との間に権利義務を設定する場合には、上述の行政行為によって一方的にこれを決定することが想定されているが、)国民と協議し、その任意の同意を求め、相互の合意(契約)により法律関係を取り結ぶ場合もあり、このように行政庁が行政目的実現の手段として締結する契約のこと。

 

カ)行政強制・・・行政機関が国民の身体や自由に強制を加え、あるいは家宅に立ち入ってその財産を没収したり破壊するなどの実力行使のこと。

@)「行政上の強制執行」行政強制のうち、国民があらかじめ命じられている義務を履行しないので、行政側が義務の履行を強制するために実力を行使するもの

A)「行政上の即時強制」行政側が緊急の必要を満たすために、あらかじめ国民に義務を課すことなく、いきなり強制力を行使するもの。

 

キ)行政上の制裁・・・行政上の義務違反者に対して制裁として過料などの不利益を課し、その威嚇的効果によって義務の履行の確保を期すもの。

 

ク)行政調査・・・行政機関が行政作用を公正に行うための予備活動として、法律の定めに従い、書類の提出その他の報告を求めたり、工場等に立ち入って身体・財産を半ば強制的に調査して情報を収集する作用。

ケ)情報の公表・・・行政機関が収集・管理している情報について、広く広報活動などを通じて情報提供し、国民の利用に供する作用。

 

※事前手続きと事後手続き

 

 

 

 

 

 

 

(参考) 行政作用の内容・目的別類型の分析

 

○目的別分類という手法は、行政法学では、「行政法各論」あるいは「(分野別)行政システム論」といわれることもある。なお、法学の分野を超えれば、「公共政策学」という学問分野を形成する。

○他にも、内容から見た分類の仕方にはさまざまなものがある。

@     積極的行政・消極的行政

A     侵害行政・利益的(非侵害)行政

B     権力行政・非権力行政

 

○以下、行政法の世界を(行政法の歴史の中でも少し触れた)「秩序行政」「整序行政」「給付行政」(南博方先生)の分類を用いて、一覧する。各分野に「行政の行為形式」がどのような形で埋め込まれているかについても、観察する。

 

⑶ 行政作用の目的別類型

@秩序行政・・・国または地方公共団体の存立の維持を目的とする作用

A整序行政・・・秩序を整備、形成することを目的とする作用

B給付行政・・・生活配慮のための給付を目的とする作用

 

@ 秩序行政について

防衛・警察・外交などの秩序行政。あわせて、これらに必要な資源の確保。徴税など。

 

ア)防衛

 昭和20年 陸海軍解体

昭和25年警察予備隊、27年保安隊設置

昭和29年自衛隊設置(防衛庁設置法、自衛隊法制定)

自衛隊の業務(自衛隊法)

防衛出動・・・武器使用

   災害派遣

国際貢献

事態対処法(行政計画)、国民保護法(即時強制)

  

イ)警察

 行政法学上の「警察」・・・社会公共の安全と秩序を維持し、その障害となる行為や状態を除去することを目的とする作用。(消防、水防、衛生、交通、産業なども含む。)

戦前は内務省(警保局)がすべてを実施

現行憲法下では、「警察権」の分散・分権の考え方により、警察(庁)の事務は司法警察、交通警察などに限定され、また自治体警察制度が導入された。

・警察消極目的の原則、警察比例の原則

 ・警察の手段(古典的な行政行為理論が当てはまりやすい)

 警職法(即時強制)

道路交通法(免許・・・行政行為)

風俗営業法(許可・・・行政行為)

 労働基準法(許可、行政調査など)

 

ウ)防災

  災害予防・災害応急対策・災害復旧(復興)から成る

  災害対策基本法(計画、即時強制)

 

※以上の分野には、即時強制や避難命令などの下命、許認可などの行政行為を活用。また、緊急事態への対処などで事前の対処計画を定める(行政計画)例も多い。

 

エ)財政

税法(国税、地方税)・・・更正処分(下命・・・行政行為)

財政の手段(税のほか、規制(行政行為・・・許可)、予算(行政計画)など)

財政の管理(財政法、会計法、国有財産法など)

※各種の手法が使われるが、特に収入確保のため、行政行為による強権の発動が特徴的。

 

A 整序行政

ア)環境・文化整序

公害の防止、文化・環境の保全・創造。「防止」・・・消極的行政、「保全・創造」・・・積極的行政

 

環境基本法

大気汚染防止法

自然環境保全法

文化財保護法

循環型社会形成推進基本法・リサイクル法

環境影響評価法(環境アセスメント)・・・国の関与する大規模事業について、環境への影響を配慮する事前アセスメントを義務づけ

 

※下命・許認可など行政行為による秩序維持のほか、計画・基準の策定、調停、協定などの行政指導、助成制度などが利用される

 

イ)経済整序

 経済秩序を望ましい方向に整序し、経済活動を規制する。

 

 各業法(銀行法、情報通信法・・・)

 独占禁止法

 製造物責任法

 消費者保護基本法

 公益通報者保護法

 

 ※許認可・承認などにより秩序を維持。行政指導や違反者氏名公表により誘導。価格支持などの手法も用いられうる。

 

ウ)空間整序

 地域空間を整備・創造する作業。計画行政の典型(計画に向けて各種の行政の行為形式を動員する)

 

 国土総合開発法

 都市計画法、土地区画整理法等

 ※行政計画、行政指導、行政行為など各種の行為形式が使われる。

※土地所有権その他の私権に対する制限の必要がある場合、公用収用・公用使用などが行われる。

土地収用法・・・特定の公共事業の用に供するため私人の土地を強制的に取得する作用について定めた法律

 

B     給付行政 

ア)供給行政

日常生活に不可欠な公共サービスを提供する行政作用。公共用物、公共施設(営造物)、公企業などの施設等が用いられる。

 

公営住宅法

水道法

郵便法

※公物法の適用範囲では(形式的)「行政行為」が適用される。また、「行政契約」の手法が用いられることも多い。

 

イ)社会保障行政

 国民に健康で文化的な最低限度の生活を保障するために行われる国・公共団体の給付活動。

 ・公的扶助(生活保護法)

 ・社会保険(健康保険法など)

 ・公衆衛生(医療法)

 ・社会福祉(社会福祉法、児童福祉法・・・)

 

※「契約」方式・「行政行為」方式

 

C助成行政

 業の振興、人材の育成などのため、資金その他の財産的利益を供与する行政作用

 

 学校教育(教育基本法)

 各種事業における補助金(適正化法)

 

     助成の決定には行政行為の形式をとるのが通常。