福井:行政法D(19.5.21)

行政組織法A

U 国

 国という行政主体について、その構成を説明します。

 国の行政権は、憲法に根拠を持つ「内閣」にあります。(「行政」という行為は司法府や立法府でも行っています。念のため)

 内閣については、内閣法がそのあり方を定めています。

 さて、Tの行政機関論では、行政主体の意思形成という観点から機能的な分類がなされたのですが、実際に存在する行政組織は、省や局、課といった組織に分かれ、それぞれごとに事務を整理しながら全体としてピラミッド構造を形作っています。行政組織は、この行政事務を分担する組織の単位で管理されています。国の行政組織について定めた法令は、このような「行政事務を分担する組織の単位」について定めるものとなっています。(組織単位としての「行政機関」)

このような各省の組織については、内閣府設置法と、国家行政組織法に基づく各省設置法が定めています。

 

⑴ 内閣法

 内閣=内閣総理大臣+17人の国務大臣

 閣議は内閣総理大臣が主宰する。

内閣官房の設置

 臨時代理の規定

 政令の限界に関する規定

 

⑵ 国家行政組織法

 (府・)省・庁・委員会(このうち、府については、平成13年からは内閣府設置法で規定)

 内部部局・外局、附属機関(審議会等、施設等機関、特別の機関)

 地方支分部局

権限の分配・調整に関する規定

 

⑶ 内閣府設置法・各省設置法(各府省の紹介)

 内閣府の主任の大臣は内閣総理大臣です。

内閣府には、ほかの省に無い存在として、内閣官房長官・副長官、特命担当大臣、四つの重要政策会議が置かれ、また、「特別な機関」として宮内庁、外局として国家公安委員会、公正取引委員会、金融庁が置かれています。なお、国務大臣を以てその長に充てる委員会及び庁は、現在では国家公安委員会のみとなっています。

 

⑷ 府省の変遷について

 行政組織の基本単位となる「省」について、その変遷を見ておきましょう。もともと国家の原型は「五省」から始まるといわれます。国の防衛を所管する外務・軍部、そのための資源を調達する財務、国内の治安・振興を担当する司法・内務の五つです。

我が国の場合、明治初年から試行錯誤の後、明治18年に内閣制度が確立しますが、この時点で9省です。大きな変化は戦後〜昭和23年と平成13年にありました。省の変化を知っているからといってほとんど何の役にも立ちませんが、「府省は社会経済の変化に応じて再編されるべきもの」という認識を持ってもらえるといいと思います。

⑸ 各省について

 現在、内閣府のほか、11省が置かれています。(本年1月にできた防衛省が最新です)

⑹ 各府省の定員について

 行政機関の職員の定員については、総定員法その他の法令で決まっています。

 

V 地方公共団体

1 地方公共団体に関する基本的な定め

 地方自治の保障(憲法92条)の内容として、団体自治住民自治が定まっていると解されています。すなわち、「国から独立した地方公共団体を設置し、住民の意思に即して事務を実施する。」ということです。

この規定を受けて、昭和22年に地方自治法(昭和22年法律67号)が制定されました。

地方自治法はその後何度も改正を経ていますが、現在まで地方自治に関連する基本法となっています。

 (関連)地方財政法、地方税法、地方公務員法、地方公営企業法・・・

 

2 地方公共団体制度の沿革

 地方公共団体制度の変遷について触れておきます。ポイントはいくつかありますが、

@    我が国の地方公共団体は明治以来、府県・市町村という二重性を持っている

A    明治憲法下でも制度にはいろんな変更があった

B    日本国憲法・地方自治法の制定により大きく性格が変わった

C    近年大きな改革がいくつかありましたが、それでもなお未解決の課題を多く抱えている

D    府県・市町村の間の格差は大きく、またその地域範囲は決して永続的ではない、

ことについて認識しておいて下さい。

 

⑴ 明治憲法制定以前の地方制度

  府県・(郡)区・町村

⑵ 明治憲法下の地方制度

 府県・(郡)・市町村(大都市特例)

・憲法上の保障がない。(立法政策による)→府県制・市制・町村制

・都道府県は不完全自治体(官選知事)

・地方団体は国の行政組織としての性格もあわせもつ

⑶ 日本国憲法・・・地方自治の保障

 ・都道府県・市(区)町村(政令指定都市制度)

・憲法上の制度的保障→憲法92条+地方自治法等

・知事・市町村長公選

・機関委任事務制度

 ・ 地方交付税制度

 ・(地方支分部局)

  このほかにも、戦後改革においては、執行機関の多元制が導入され、教育委員会(当初公選制)、公安委員会などが創設された。また、警察についても、戦後初期には市町村警察制度が試みられた。

⑷ 地方分権改革

平成11年地方分権一括法(地方自治法等改正)による機関委任事務の廃止→法定受託事務の創設

 市町村合併により市町村が広域化(平成10年度末約3200→平成18年度末約1800)

 三位一体改革

税源の見直し(国▽・地方△)、補助金・交付金の見直し(国△・地方▽)、事務事業の移転(国▽・地方△)