行政法26(19.12.25)
⑸ 不服申立ての方法
@教示制度・・・書面による処分の場合、あるいは請求のあった場合には、不服申し立てができる旨、その申立先・申立て期間を教示する必要がある。
A審理手続(審査請求の場合)
・審査庁による書面の受理・・・不備の場合は却下
・ 処分庁の弁明書・請求人の反論書提出
・ 書面審理の原則(申立により口頭で意見を述べる機会を付与)
・ 証拠書類の提出・閲覧権
・ 鑑定、審尋、調査など職権審理主義に基づいて審査。争点外事項も対象となる(職権探知主義。最高裁昭和29年判決)。
⑹ 裁決(審査請求)または決定(異議申立)
@次の三種類のいずれかの裁決・決定がなされる。
・却下
・棄却・・・不服申立て人の主張に理由がないとして、処分を維持するもの。
※特殊な場合として、申立て者の主張を認めるが、「処分を取り消し又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは」「当該処分が違法又は不当であることを宣言」した上で、申立てを棄却する事情裁決・事情決定という方法がある。(40条E)(損害賠償、損失補償の請求権を発生させる効果があるとされる)
・認容・・・不服申立て人の主張に理由があるとして、処分の全部・一部を取り消す、あるいは処分の一部を変更する。この場合、申立人の不利益になる変更は禁止されている(40条D・47条B)。なお、事実行為に対する不服申立てを認容するときは、事実行為の「撤廃」又は「変更」が宣言される。
A不作為についての不服申立てについて
・ 審査請求認容の場合→速やかになんらかの行為をすることを命じ、裁決で宣言する(51B)。処分をすみやかに決定すべきことのほか、特定の処分をなすべきことも命ずることができると解されている。
・ 異議申立があった場合(却下の場合を除く)→20日以内になんらかの行為をするか、書面で不作為の理由を説明する。
B裁決・決定は書面で行い、理由附記が必要とされる。(理由附記なければ取消し原因となる)
※審査の対象は、処分(不作為)の違法か適法かの問題にかぎられず、裁量の当不当(踰越が無くても)にも及ぶ。
⑺ 執行不停止の原則
処分に対し不服申立てがあった場合、執行停止を認める立法もありうるが、行政不服審査法は不服申立てにそのような効力は認めなかった(申立ての濫用による行政の麻痺を恐れたと考えられる)。したがって、処分について不服申立てが係争中であっても、行政庁は処分の執行を続行することができる(もちろん強制執行するには法律の規定が必要である)。ただし、審査庁は、審査請求人の申立てがあった場合などに、執行を停止することができる。
⑻ 特別法による不服申立
@行政不服審査に特別の定めを置くもの
・ 国税不服審判(国税通則法)・・・異議申立の前置、国税不服審判所への審査請求など
・ 社会保険関係(健康保険法など)・・・社会保険審査官への審査請求、社会保険審査会への再審査請求
A行政不服審査とは別形式の不服申し立て
・ 工業所有権関係(特許法)・・・特許出願拒絶等への不服審判は複数の審判官により行う
⑼ 苦情処理
・法律上の権利義務ではなく、事実上のサービスとして、行政に対して苦情を申し出る制度が、国・地方公共団体等に設けられており、これらを行政相談・苦情処理などと呼んでいる。総括的なものとして、総務省の行政相談がある。苦情申し出を受けてその解決のためのあっせんを行っているほか、これを端緒として行政監察を行うこともある。(申し出人からの事情聴取→関係機関への照会など→関係機関に対してあっせん→苦情申し出人に通知)
・各地域に、行政相談委員が配置されている。(行政相談委員法)
・行政相談・苦情処理は、法的な権利ではないから、効果が期待しづらい面もあるが、誰からでも、どんな問題でも対象となる、時間・費用などはほぼかからない、民民紛争などでも(行政指導の端緒となり)妥当な結果を得やすい、などの長所がある。
・さらに進化した形であるオンブズマン制度を求める声もある。(議会型オンブズマン、行政型オンブズマンなど)
(ここまで、再掲)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4 行政事件訴訟@
⑴ 制度の概略
・「行政事件訴訟」とは、行政作用によって国民に具体的な不利益状態が生じた(又は生じるおそれがある)場合に、国民の側から裁判所に訴えを起こし、行政の活動にかかわる作為・不作為の違法性につき審理を求め、違法な行政作用によってもたらされた(又はもたらされるおそれのある)違法状態を排除して権利利益を回復・実現する訴訟手続である。
※ 行政事件訴訟法には、@抗告訴訟A当事者訴訟B民衆訴訟C機関訴訟という四つの訴訟類型が定められており、広義にはこれらを行政事件訴訟と呼ぶが、上の定義に該当する(狭義の)行政事件訴訟は@とAである。
・ 裁判所で行われる訴訟手続であり、民事訴訟と共通するところが大きいが、行政活動に関する紛争審理であり、公共の利益に関わることが大きいことから、特別の審理手続をとることにしているのが行政事件訴訟制度である。(戦前は、審理手続を別にするだけではなく、裁判所自体を別にしていた。)
※ 民事訴訟との比較
民事訴訟・・・給付訴訟、形成訴訟、確認訴訟(現在の状態に対する訴え)
行政事件訴訟・・・行政庁の公権力の行使に関する不服を中心に据えた。(過去の行為の取消しの訴えが含まれる)
・なお、行政の活動であっても、私法が適用されるべき行為については、民事訴訟として裁かれる(行政との間で結ばれた請負契約を実行したにも関わらず行政が代金を払ってくれない場合、とか、民法上の責任とされる不法行為責任について問う場合など)ので注意。
※公益に関わる訴訟となる場合が多いということから民事訴訟との違いが説明されるが、一方、行政作用の適法性を維持して国民の適正な利益(権利)を保障するための制度でもあり、国民にとって使いやすい制度でなければならない。行政事件訴訟法は昭和37年に制定されたが、原告適格が厳しいとか、裁判の類型が乏しいなど、使い勝手の悪さが学界等で指摘され、平成16年の大改正で、
@抗告訴訟の多様化、A取消訴訟の原告適格の拡大、B仮保護制度の充実、C出訴期間の延長、教示制度の新設、D管轄裁判所の拡張、E裁判所の釈明処分の特則設定
がなされた。
※この変化の背景には、ア)行政裁判所制度など行政権の特殊性を前提に、行政による判断を重視する行政国家型システムと、イ)「コモン・ロー」の支配を前提として行政の活動も、私人間の紛争同様に通常裁判所において裁判する司法国家型システムがある、として、日本のシステムをより理念型的なイに近づけていこう、という考えがある。
⑵ 経緯
@行政裁判制度
・行政事件についての訴訟は、明治憲法下では、行政裁判所(61条)において審理すべきものとされていた。(ただし、私法関係や管理関係については通常裁判所でも受け付けていた。)
・その背景には、通常裁判所は、専門技術性の面で行政に劣後する、という考えがあった(裁量行為への司法審査の抑制を想起されたし)とされる。
・行政裁判法(明治23年法律106号)による行政裁判は、行政救済制度としては、一審終審、所在は東京のみ、出訴事項は列記主義、書面審理中心で職権主義的色彩が強く、人事的な独立についても不十分であった、と批判される。
A日本国憲法の施行以後
・日本国憲法施行とともに、行政事件の裁判を含めて一切の法律争訟が司法裁判所の管轄となった。
「すべて司法権は、最高裁判所及び・・・下級裁判所に属する。・・・行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。」(76条)
・これは、上述の司法国家型システムを採用することを宣言しているものと理解される。これを受けて、裁判所法でも以下のように定めている。
「裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判・・・権限を有する。」(3条)
※行政事件については、明治憲法下では(大陸法の考え方に基づき)「裁判の形はとるが、行政作用である」と考えられていた。新憲法では法律上の争訟である限り、司法権の範囲内と考えられている。(司法権の中であれば、行政に関する特別裁判所を作ることは可能)
★「法律上の争訟」・・・法の適用により解決されうる具体的かつ現実的な利害衝突をいう。したがって、@)利害の対立する一方当事者の他方に対する具体的な権利その他の法律上の主張がなされている必要がある。A)仮定的・一般抽象的な問題は該当しない。B)法律の適用により解決できるものである必要がある。
→@)自分の利益と関係のない事項について訴えることはできない(例外・民衆訴訟・機関訴訟)、A)具体的な事件が存在しないのに抽象的な法令の審査を行うことはできない、B)芸術的評価や政策の当否を判断することはできない。
・昭和22年「日本国憲法の施行に伴う民事訴訟法の応急的措置に関する法律」の中に、行政事件については、出訴期間のみ特例を置き、後はすべて民事訴訟によることとした。(政府は当時、行政裁判法に代わり通常裁判所における行政訴訟に係る法律の提案準備をしていたが、GHQが認めなかったといわれる)
・公職追放を受けた平野力三氏が追放処分について仮処分を申請し、東京地裁がこれを容認したことから、GHQは日本の裁判所は公職追放令の規定について裁判権を有しないとの指摘を行い(昭和23年2月4日)、東京地裁に仮処分決定を取り消させた。これを「平野事件」というが、これを機にGHQも行政事件の特例的取り扱いに踏み切り、その要請を受けて「行政事件訴訟特例法」が制定された。
・行政事件訴訟特例法(昭和23年法律81号)の概要
@訴願前置主義A仮処分規定の不適用、執行停止に関する内閣総理大臣の異議制度B訴訟期間は六ヶ月C被告は処分行政庁・(東京地裁を中心とした)土地の専属管轄制度、D事情判決制度E職権による訴訟参加・職権証拠調べ制度
・その後、他の法令との調整などが不十分であるなどの指摘を踏まえ、「行政事件訴訟法」(昭和37年法律139号)が制定された。
当時の考えは、公法私法の二元論が前提であったといわれる。
@行政事件訴訟の類型化、A訴願前置主義の原則廃止、B一般管轄・特別管轄の定め、C出訴期間は原則三ヶ月、D執行停止・内閣総理大臣異議制度の整備、E取消判決の対世効を認め第三者再審制度を新設、F争点訴訟に関する規定を整理
・その後、上述のように、平成14年から司法制度改革推進本部行政訴訟検討会で見直しが行われ、平成16年改正法が制定され、17年から施行に移されている。
⑶ 基本的な問題
行政権・司法権の分立の観点、および、「裁判」の性格からくる以下のような制約があるといわれる。これらを念頭において、制度的な面について学んでください。
@ 「統治行為」の理論
高度の政治的判断を伴う行為については、もっぱら法律的判断のみを使命とする司法裁判所の審査にはなじまない。(昭和34年最高裁判決:砂川事件など)
A 事件争訟性があるかどうか
@)争いが裁判所で判断できるまでに成熟していない(やってもまたやり直しになりうる)やA)訴えの利益に欠けるものは司法審査の対象にならない。(昭和27年警察予備隊訴訟、行政計画に関する訴訟など)
B 行政庁の第一次的認定判断権
行政庁が第一次的判断を行う前に裁判所がこれに代わって判断することは、行政権の独立を乱すことになるとされていた。→この点は平成16年改正で改められた。
C 行政裁量事項
裁量範囲の踰越・裁量権の濫用がない(違法ではない)裁量行為については、法律が判断を行政権にゆだねていると考えられる(判断過程の審理は行う)。
⑷ 行政事件訴訟の類型
・行政事件訴訟には、次の四つの類型がある(行政訴訟法3条@)(前述)
ア)抗告訴訟 イ)当事者訴訟 ウ)民衆訴訟 エ)機関訴訟
このうち、ア)とイ)は個人の権利利益の保護を目的とする訴訟(主観的訴訟)であり、裁判所法でいう「法律上の争訟」である。ウ)とエ)は、客観的な法秩序の適正維持を目的としている訴訟(客観的訴訟)であり、裁判所法3条により「法律において特に定めがある場合」にのみ提起することが許される(行政事件訴訟法42条)
ア)抗告訴訟
まず、最も中心的な存在である抗告訴訟を見てみると、次のような訴えに分類される。(3条A以下)
@ 処分の取消しの訴え
行政処分を無かったものとすることを求める訴え。
※有効性が推定される行政処分は、権限ある機関が適法に取り消さないかぎり有効となる。(「公定力」)その権限ある機関(の最後のもの)が裁判所であり、その方法が「処分取消しの訴え」である。
A裁決の取消しの訴え
審査請求等によりなされた裁決を無かったものとすることを求める訴え。処分と裁決(による不服申立の棄却)とがある場合、どちらを裁判の対象とすべきか。行政事件訴訟特例法では不明であったため、行政事件訴訟法では10条Aで、処分の取消訴訟によってこれを主張すべきものと定め、「原処分主義」を採用している。
なお、裁決の取消を求めることになる場合には、次のようなものがある。
・ 裁決に固有の瑕疵がある場合・・・手続の瑕疵など
・ 特別法で裁決主義をとっている場合・・・特別法で、裁決についてのみ出訴を許しているものがある。選挙関係の争訟(公職選挙法203条など)、技術的検査にかかわるもの、行政委員会の採決にかかわるもの(特許法178条E、電波法96条の2など)については、裁決の段階で原処分のときより詳しく審査がなされると考えられるので、裁決の方をとらえて訴訟させようとするものである。
※裁決で原処分の一部が変更された場合、それでもまだ不服がある場合は、原処分について訴え出ればいいのか、裁決について訴え出ればいいのか。
@)一部取消裁決の場合・・・課税処分の一部が裁決で取り消された場合、減額された原課税処分が残っていると考えられるので、原処分の取消を求めることになる。
A)修正裁決の場合・・・営業免許取消が営業停止に変更された、懲戒免職が懲戒停職に変更されたというような場合、最高裁は裁決で修正された原処分について、さらに取消しを求める、という考え方をとっていると考えられている。(昭和62.4.21判決)
B無効等確認訴訟
・処分・裁決の存否又は効力の有無を争う訴訟。この判決で求める状態は、行政処分が無効又は不存在の状態であるから、公定力や不可争力などの効力が存在しないという前提で提起することになる。(出訴期間の規定を受けない)(戦前の大審院時代からあった判例法理。行政事件訴訟法において法定された。) ○無効等確認訴訟は公定力などを無視して提起できる訴訟であることから、その提起には制限がある。争点訴訟や公法上の当事者訴訟で権利保護ができる場合には、無効等確認訴訟は使えない(行政訴訟法36条)とされる。(補充性) ○当該処分に起因する紛争を解決する争訟形態として、無効等確認訴訟が当事者訴訟や民事訴訟と比較して直截的で適切な争訟形態であると認められる場合にも、無効等確認訴訟の補充性が認められる。(行政処分の効果に多数の当事者が関連する場合など・・・換地処分の例(最高裁昭和62.4.17)
C不作為の違法確認訴訟
行政庁が(私人からの)法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分(許可、不許可など)をすべきにもかかわらずこれをしないとき、何もしていないことについての違法の確認を求める訴訟(・・・昭和37年の行政事件訴訟法が策定されたときには、行政の第一次的判断権を認めないと三権分立の大前提を覆すことになるのではないか、との意見もあり、Dの義務付け訴訟は法定されなかった)
D義務付け訴訟
さらに一歩進めて、行政庁に「こういう行為をしろ」と求める訴訟(平成16年改正事項)
@)行政庁が一定の処分をすべきであるのにしない場合、一定の処分を求める訴訟(危険な状態を放置しているとき、規制を行うように行政に求める(行政介入請求)訴訟) A)国民が法令上の申請に基づいて行政庁が一定の処分をすべきであるにもかかわらず、しないときに、一定の処分を求めて提起する訴訟(→Cとセットになる場合と@ABとセットになる場合がありうる)
・義務付け訴訟では、裁判所は、
a)行政庁が一定の処分をすべきことが、法令の規定に照らし明らかであるか、あるいは当該処分をしないことが裁量権の踰越または濫用にあたると認められるときは、取消や不作為の違法確認を認容するとともに、義務付けの請求も認容して、処分を行うことを行政に命じる判決をする。(37条の3D) b)行政庁が一定の処分をすべきことが明確でない場合には、義務付け訴訟の手続を中断し、取消や不作為の違法確認についてのみ終局判決を下す。(37条の3E)
E差止め訴訟
行政庁が一定の処分又は裁決をしようとしている場合において、これをしてはならない旨命じることを求める訴訟。違法状態を事後的に排除する@〜Bの取消訴訟等とは違い、権利侵害を未然に防止するための事前救済システムと位置づけられる。
F無名抗告訴訟
以上の6類型は限定列挙ではなく例示と解されており、これ以外にも「名づけられていない」非典型・法定外抗告訴訟がありうる。(義務付け訴訟や差止め訴訟が長くこの例とされてきたが、現在では法定類型とされたので、現段階では無名抗告訴訟とされるものは理論化されていない。)