行政法18(19.10.22)
行政作用法各論F
行政計画
⑶ 分類
@ 対象事項別 経済計画、国土計画、防災計画、財政計画・・・
A 対象の範囲別 ア)総合計画(全般的):国土総合開発計画
イ)特定計画(特定事務事業):道路整備計画、住宅整備計画
B 地域別 全国計画、地方計画(九州圏整備計画)、区域計画(○○市整備計画)
C 期間別 ア)長期計画(10年〜) イ)中期計画(5年前後) ウ)短期計画(1〜2年)
エ)単年度計画・四半期計画
D 内容別 目標(基本)計画(目標を示す) 実施(事業・管理)計画(事業の具体的内容を示す)
E 法律根拠の有無 法制上の計画、事実上の計画
F 拘束力の有無 拘束計画(関係行政庁の判断(行政行為など)を拘束する)・非拘束計画(判断指針を示すに過ぎない計画)
⑷ 計画策定の事前手続
法的統制・・・行政計画は法律の規定が無ければ作れないものではない(それ自体は「法律の留保」の対象外)が、特にFに関して、各種の権利制限の効果を持つ拘束計画(都市計画など)は行政立法に類似し、@)法律の根拠、A)法律に法的効果や計画の限界が示されること、B)法律に関係人の計画策定参加手続規定が定められること が求められる。
☆計画策定手続・・・一般的に考えられるのは、
イ)公告・縦覧、意見書の提出、 ロ)公聴会、 ハ)審議会・・・利害調整と専門家の意見聴取、ニ)関係機関間の協議、ホ)パブリック・インボルブメント、 ニ)住民の意思調査など (→土地収用法、環境影響評価法、行政手続法など参照)
⑸ 計画の事後統制
・行政計画そのものは行政行為でなく、特定個人の権利変動を直接にともなうものではないことから、取消訴訟の対象にはならない(昭和41年2月23日最高裁判決「青写真論」)とするのが判例の基本的な立場。
・ただし、「処分性」を認め、訴訟の対象となる例もあります。(平成4.11.26最高裁判決など)
※ なお、平成14年の行政事件訴訟法改正により、計画の策定後、後続する行政処分が予想される場合について、事前予防的に処分の差止め訴訟などができることになった。(行政救済法で再掲)
⑹ 計画担保責任
・行政主体が決定した計画や施策が後になって変更されたことにより、特定人が損害を受けたとき、行政主体が負う責任のこと。
行政計画は、将来の見通しや政策優先度の変更、実施手法の変化などにより変更されたり取消されることがありうる。(必要な場合にはどんどん変更されねばならない。)
・しかし、行政庁がいったん定立した計画をみだりに変更すると、計画を信頼してその実現に協力した国民に不測の損害が及ぶ。この場合、計画の実現に協力し、具体的な行為に着手して費用を出捐した国民に対して、その信頼利益を補填する必要がある。これが「計画担保責任」であり、損害を受けた国民の側から見れば「計画保障請求権」と呼ばれる。
※最高裁判例はこれを認めていないとされるが、
@地裁段階では、市が市営住宅団地建設計画を廃止した場合に、団地予定地に公衆浴場建設を進めていた業者の損害賠償請求を認めた例(昭和44年4月30日熊本地裁玉名支部判決)がある。
Aなお、地方公共団体が工場誘致政策を変更したため、投資が無駄になった企業に「行政指導を信頼した者への保護」の観点で、損害賠償請求を認めた例(昭和56年1月27日最高裁判決)がある。
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↓は次回に持ち越し
行政契約・行政指導(1)
・「行政契約」や「行政指導」という行政の活動手法(行為形式)は、「行政行為」に対し「非権力的な行為形式」と呼ばれる。
・「法律の欠如」への対処・・・公害問題などについて、法律の規定が無ければ行政は何もできないのか。(侵害行政や権力的行政(行政が一方的に物事を決めるタイプの行政活動)については「法律の留保」が働く)⇒非権力的(一方的でない)行政活動により行政需要に対応する必要。
・「給付行政」の増大・多様化への対処・・・行政契約の形式でサービスを提供。(ただし、申請の平等的処理や施設の利用調整のために法律が特に行政行為の形をとっていることもある→公園の利用、年金受給決定)
行政契約
⑴ 定義
行政庁が(公共のサービス活動を遂行する過程で、国民との間に権利義務を設定する場合に、行政行為によって一方的にこれを決定することとせず)、国民と協議し、その任意の同意を求め、相互の合意(契約)により法律関係を取り結ぶ、行政目的実現の手段として締結する契約のこと。
次の二つの観点から分類されることが多い。(@とAの@・Aは対応関係にないので注意)
@ 目的別分類
@)公法関係の設定、変更または廃止を行う「公法契約」・・・例:公用負担契約(民法の契約自由の原則がそのままでは該当しない)
A)それ以外の目的のために結ばれる「私法契約」・・・例:水道給水契約(完全な私法契約とも言い切れない・・・契約自由の原則はない)、調達行政(請負や委託)(→法的統制の必要性:私的自治に制限、一般競争入札の導入と入札談合の排除)
A 内容別分類
@)組織法上の契約(行政主体間などで行われる契約)・・・例:地方公共団体が別の地方公共団体の区域に公の施設を設置する場合の「協議」(地方自治法244条の3)、公益法人等への業務委託
A)作用法上の契約(行政主体と私人との間の契約)・・・例:公害協定、水道給水契約
⑵ 給付行政と行政契約
水道給水をはじめとする公益事業や公営住宅の利用などについては契約によって決められる。
(ただし、施設の利用、国民年金の受給などは行政行為として構成されている。・・・「形式的行政行為」)
以下のような点で契約自由原則と違った取り扱いが必要と考えられる。
・ 平等原則に基づく公正取り扱いの必要性(給付条件の法定、または規範化)(供給側が一定の供給条件を示し、それに需要側が同意する「附合契約」形態が通常)
・ 生存権との関連あるサービスの公平(先着順や抽選など)・確実な提供(「契約強制」・・・供給拒否は正当な理由のある場合に限定)
・ 正当な理由・・・料金の不払い、供給能力をこえる需要など当該事業の遂行に支障となる事由(それ以外の事由で供給拒否すると「違法結合」)⇒給水停止を条件としたマンション建築行政指導は違法
※ 報償契約・・・ガスなど公共事業について、行政と事業主の契約の形で事業実施を特許したもの。→事業法により行政行為として整理されていった。
⑶ 取締行政・整序行政と行政契約
法律の不備を補足してきめ細かい規制を行う必要のあるときなど、行政側と関係者が協議して適切な対応措置を取り交わす契約手法の活用がなされる。
・公害防止協定(進出企業に公害防止措置をとらせるなど)、安全協定、風景地保護協定など
また、関係者相互の協定に行政庁が承認を与えるという手法もとられる。
・建築協定(建築基準法69条)
・緑地協定(都市緑地法45条)
※ 協定違反について「契約違反」は問えるか。⇒協定は「法律による行政」を骨抜きにし、相手ごとに不平等な取り扱いをする可能性もありうることから否定的な見解もあったが、現在では裁判手続きによる強制は可能であるとする説が有力。
⑷ 調達行政と行政契約
調達行政は、(資源確保のためには、徴税、公用収用、公務員の任命などの強制的な手法が使われるが、)多くの場合、契約によって行わている。これらの行政契約について、法的統制の必要性が強くなってきている。(上述)
⑸「行政契約」の有用性と問題点
・ 水平モデル・パラダイム
公権的行為はできるだけ少ない方がよく、官と民とが水平的な関係である行政契約の形をとる行政契約の多用は望ましいことである。
・ 契約による公序崩壊パラダイム
契約は特定の業者を選択する仕組みであり、平等原則に反する。また、契約により相手方に(必要以上に)安価なサービスを提供させることで、本来の目的に沿わないことになるのではないか。