(まとめ)

T 行政法総論

 1 大陸法系と英米法系

@         大陸法系・・・ドイツ、フランス(行政裁判所、公法と私法の区別、法律による行政)

A         英米法系・・・イギリス、アメリカ(通常裁判所、コモン=ロー(行政も私人も同じ法律体系))

2 法律による行政の原理(オットー=マイヤー、美濃部達吉)

  @ 法律による法規創造力の原則・・・法規(国民の権利義務に変動を及ぼす一般的抽象的規律)の創造は、立法権の専権に属し、行政権は、法律による授権が無い限り、法規を創造することはできない。(憲法41条に対応)

A     法律の優位の原則・・・行政活動は、存在している法律の定めに違反して行われてはならない。

B     法律の留保の原則・・・行政活動は、Aに加えて、(一定の分野では)それを行うことを認める法律上の根拠がなければ、行うことができない。

 3 法律の留保原則の適用範囲について

  ア 侵害留保説  国民の権利自由を権力的に侵害する場合には法律の留保の対象となる。

  イ 全部留保説  国民の権利自由を制限するもの、国民に権利を与え義務を免じるものであるとを問わず、国民の権利義務にかかわる場合には法律の留保の対象となる。

  ウ 権力留保説  権力的作用(行政側が一方的に法律関係を決めたり強制を加える活動)については法律の留保の対象となる。

  エ 社会留保説  アの侵害行政に加え、社会権の確保を目的として行われる生活配慮行政も法律の留保の対象となる。

オ 本質留保説  国民の基本的人権にかかわりのある重要な行政作用の基本的な内容については、法律の留保の対象となる。

4 行政の発展

@秩序行政・・・国または地方公共団体の存立の維持を目的とする作用

A整序行政・・・秩序を整備、形成することを目的とする作用

B給付行政・・・生活配慮のための給付を目的とする作用

U 行政組織法

 1 行政主体  行政上の権利・義務の主体となる法主体(法人)。国、地方公共団体、独立行政法人、公共組合など

 2 行政機関  法人である行政主体に代わって、行政活動を行う内部機関。自然人がその職にあたる。行政機関は権利義務の主体とはならない。

  ⑴ 行政庁・・・行政主体の意思を決定し外部に表示する権限を持つ機関。内閣、○○大臣、公正取引委員会、○○県知事、××市長など。法令の規定により、財務大臣の下部機関である税務署長などが行政庁になる場合もある。

  ⑵ 諮問機関・・・上級機関の判断の形成のために情報を与えたり提言を行う権限・責務を有する機関。審議会、顧問など。

  ⑶ 参与機関・・・諮問機関の一種で、その意見・提言が行政機関を法的に拘束する権限を与えられたもの。総務省に置かれる電波監理審議会など。

  ⑷ 監査機関・・・行政機関の事務や会計の処理を検査し、その適否を監査する機関。総務省行政評価事務所や会計検査院など。

  ⑸ 執行機関・・・行政目的を実現するために必要とされる実力行使を行う機関。警察官、消防職員、徴税職員など。

  ⑹ 補助機関・・・行政庁の職務を補助するために置かれる機関(普通の公務員)。⑵〜⑸の機関も補助機関とひとくくりにされることもある。

 3 独任制と合議制

  行政機関がひとりの自然人で占められるか、複数人の合議制となっているか、による分類。特に行政庁について言う。行政庁は意思決定を迅速に行い、責任を明確にするため単独の自然人に当たる独任制をとるのが普通とされるが、特に政治的に中立公正な行政を営む必要のある領域や専門技術的な知見に基づく判断を必要とする分野においては、複数の自然人による合議制の行政庁が設けられている。公正取引委員会・国家公安委員会や地方公共団体の教育委員会などがその例である。

 4 行政機関の一体性の保持

行政機関は次のような原理に基づいて構成・運営されている。

@ 階層性、権限の分配、相互調整    A 指揮監督・・・監視、訓令権、取消権・停止権など

5 権限の委任・代理

・委任・・・行政機関が自己に与えられた権限の一部を他の行政機関に委任して行わせること。法律効果は受任者に帰属する。法律の根拠が必要。

・代理・・・権限そのものはもとの行政機関に残したまま、現実の行使を他の機関に代行させること。権限者が授権するものを授権代理といい、権限者に事故等があった場合に法律の定めるところに従い他の行政機関が本来の行政庁の権限すべてを代行するものを法定代理という。

・専決・・・権限の行使について、行政庁が専決規定などの定めに基づいて、その補助機関に事務処理の決定を委ねるもの。

 6 国の行政組織(※「行政機関」の語は、国家行政組織法では一定の所掌事務を分担する自然人の集合体をいう)

  主要な国の行政組織   ・内閣(内閣総理大臣+14人以内の国務大臣(必要な場合にはさらに+3人))

   ・内閣府 各省 (府は1、省は11(平成19年に防衛庁→防衛省で11)。国家公安委員会(委員長は国務大臣)を加えて1府12省庁という)

   ・外局(庁・委員会)、内部部局(局・官房・課など)、地方支分部局、特別の機関、審議会等など

 7 地方公共団体

  ⑴ 普通地方公共団体・・・都道府県・市町村

   @首長制(知事、長)、地方議会、独立委員会

   A条例制定権 「法令に反しない限り」制定が可能

     国によって統一的に処理すべき事項や国が現に実施している事務については条例の対象とはならない。

     ただし、国の法令と併存するように見えても法令とは別の目的に基づく規律である場合、法令が地方の実情に応じた規制を施すことが認容される趣旨である場合(この場合が上乗せ条例)は、条例を定めることができる。

B         住民の地位・・・住民には、長や議員の選挙権のほか、直接請求(条例の制定改廃請求、事務監査請求、議会解散請求、長・議員の解職請求など)権や、住民監査制度・住民訴訟を提起する権利が認められている。

  ⑵ 特別地方公共団体・・・特別区(東京都の区)、地方公共団体の組合、財産区など

 8 情報の管理・公開・・・情報公開法(インカメラ制度など)、行政機関個人情報保護法など

 9 公務員・・・国家公務員法、地方公務員法、国家公務員倫理法など

 10 公物・・・国有財産法、地方自治法など

V 行政作用法

※行政過程論・・・行政作用中に「一般的に」見られる情報の収集、命令の策定、行政処分の発動、契約・行政指導など、行政の国民への「働きかけのしかた」について、その働きかけ方を類型化して考察する方法。それぞれの類型を「行政の行為形式」と呼ぶ。

1 行政行為

行政庁が行政目的を実現するために、法律によって認められた権能に基づいて、一方的に国民の権利義務(作為・不作為など)その他の法的地位を具体的に決定する行為。

 ⑴ 分類

@法律行為的行政行為・・行政庁が一定の法律効果の発生を欲し(効果意思)、これを外部に表示することによって成立する行政行為

○命令的行為・・・国民に一定の作為・不作為の義務を命じる(あるいは逆にその義務を解除する)行為。(自由権の制約)

ア)          下命(納税命令、違法建築物の除却命令)、禁止(営業停止)  

イ)          許可(営業許可、運転免許)   ウ)免除(就学免除)

○形成的行為・・・国民が本来なら有していない特殊な権利・能力などの法的地位を与えたり奪ったり(形を成すように)する行為。

エ)          特許(鉱業権の設定、公企業の特許)、剥権行為  

オ)          認可(農地の権利移転許可)  カ)代理(公法人の理事長の任命)

  A 準法律行為的行政行為・・意思表示以外の判断・認識の表示に対し、法律が(自動的に)一定の法的効果を結合して、行政行為となるもの。

  ア)確認(公職選挙法上の当選人決定)  ク)公証  ケ)通知  コ)受理

 ⑵ 効果

  @公定力・・・有権的機関によって取り消されるまでは、有効性が推定され、相手方、行政機関等いずれもその行為に従わねばならなくなる効力。(行政事件訴訟法等実定法の規定に依ると考えられる)

A拘束力・・・取消されない限り、相手方だけでなく関係行政機関も拘束する効果。(もちろん処分を行った行政機関も拘束される。)

B不可争力・・・一定の期間経過後は(無効である場合を除き)、不服申立て、訴訟ができなくなる効果。公共の秩序のためには、法的関係を早めに安定させてしまう必要がある、という考えに基づく。(ただし、この措置は、実定法の規定に依る)

C不可変更力・・・行政庁の職権による変更・取消しができなくなる効果。(ただし紛争裁断効果を持つ特定の行政行為に関する場合のみ)

D執行力・・・民事判決を得なくても、行政行為を根拠として自力で執行できることになる効果。実定法の規定に依る。

⑶ 行政裁量

@ 羈束行為・裁量行為・・・法律の適用が一義的に決まる行政行為を「羈束行為」、法律の規定が明確でない部分(不確定概念)について、行政庁が独自の判断を加味して行う行政行為を「裁量行為」という。

A     法規裁量と便宜裁量・・・裁量行為のうち、司法審査になじむものを「羈束裁量」(法規裁量)、そうでないものを「自由裁量」(便宜裁量)と呼ぶ。

○裁量の対象が要件認定、効果判断いずれにあるに関わらず、原則として羈束裁量であると考える。(「判断代置方式」を用いて審査)

○法律が行政庁にしかできないであろう専門的判断や、あるいは裁判所では対応できない政治的判断を予定していると考えられる場合には、自由裁量として扱い、裁判所では判断しない。(「裁量不審理の原則」)

○ただし、自由裁量行為でも、裁量権の踰越のある場合は審理の対象となる。 

 ⑷ 附款

当該行政行為の効果を制限したり、あるいは特別な義務を課すため、主たる意思表示に付加される行政庁の従たる意思表示のこと。(行政庁の裁量範囲内で付される)以下のような種類がある。

@         条件・・・行政行為の効果を発生不確実な将来の事実にかからせる意思表示。

A         期限・・・行政行為の効果を将来発生することが確実な事実にかからせる意思表示。

 B 負担・・・授益的な行政行為に付される意思表示で、相手方に特別の義務を命ずるもの。

例えば、公設運動場(公共の施設)の使用許可に当たって利用料を支払う、運転免許にあたり運転者に眼鏡等使用を義務づける。

C 取消権(撤回権)の留保(「行政行為の取消・撤回」の項)

D 法律効果の一部除外(旅費の不支給など。法文に根拠のある場合に限定)

⑸ 行政行為の瑕疵

○無効な行政行為・・・誰でも、いつでもその効力を無視できる→「公定力」「不可争力」の例外(すなわち行政事件訴訟法の取消訴訟の例外→無効等確認訴訟の対象)

○取消しうべき行政行為・・・違法ではあるが有効。裁判所や権限ある行政庁の取消しを待ってはじめて効果を失う→取消訴訟の対象

○行政行為の不存在・・・行政行為そのものが無い、と考えられるもの。誰でも、いつでもその存在・効力を無視できる→無効等確認訴訟の対象

 ※「無効な行政行為」と「取消しうべき行政行為」との区別

イ)実現不可能説(オットー・マイヤー)

ロ)権能付与規定違反無効説(美濃部達吉)

ハ)重大明白説(通説・判例)・・・行政行為が当該行為の根幹にかかわる重要な要件に違反しており、かつ、そのことが客観的に疑う余地なく明白であれば、無効。

@)一見明白説・・・瑕疵が明白である、とは、処分成立の当初から誤認であることが外形上客観的に明白である場合を指し、行政庁がその怠慢により調査すべき資料を見落とした否かには拘わらない。(最高裁昭和36年3月7日判決)

A)客観的明白説・・・一見明白な場合に加え、行政庁が特定の行政処分をするに際しその職務上当然に要求される調査義務を尽くさず、しかも簡単な調査をすることにより容易に判明する重要な処分要件の存否を誤認してなした場合にも、明白な瑕疵があると解する。(東京地裁昭和36年2月21日判決)

ニ)          重大説・・・第三者保護の必要のない場合に、瑕疵の明白性を問題にせずに無効とした例(最高裁昭和48年4月26日判決)。

⑹違法性の承継

当該行政行為でなく、これに先行する行政行為の瑕疵を当該行政行為の瑕疵として主張することができるか。原則として瑕疵は承継されない。

⑺行政行為の瑕疵の「治癒」

  瑕疵ある行政行為の瑕疵が後日の事情の変化によって瑕疵として非難するに足らなくなった場合、行政行為を適法なものとして扱うことがある。

@「瑕疵が治癒された」場合

A     違法な行政行為が「転換された」場合

 ⑻行政行為の取消と撤回

  行政行為は、権限ある機関によって取消されないと公定力によって有効なままであり、期限の到来、条件の成就、義務の履行その他によって効力が消滅するまでは存続し、関係者を拘束する。しかし、公益のために適当でないという状態になったら、効力を消滅させることが求められる。

権限ある機関の取消

@)裁判所・・・行政事件訴訟法・・・違法な行為の取消

A)行政庁(審査庁)・・・違法・不当な行為の争訟取消(職権での取消)

B 行政庁(処分庁)・・・違法・不当な行為の争訟取消のほか、職権での取消・撤回

@瑕疵ある行政行為の職権取消し

行政行為が成立当初から瑕疵を有している場合、行政行為を行った処分庁が取り消しの意思表示を行い、はじめからなかったことにする。(取消の制限の場合あり)

A行政行為の職権による撤回

 瑕疵なく成立した行政行為について、その後の事情変化を理由として、失効させること。(以上)